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【行きたくないと言われたら】高齢者の避難拒否 説得より段取りで動かす

避難を拒否する高齢の親に当日説得するのではなく行き先や合図をふだんから決める段取りを解説する記事のアイキャッチ画像 避難の手順とタイミング

台風が近づいているのに、義母が「私はここでいい」「避難所なんて行かない」と言って動いてくれない。そんな場面を思い浮かべて、不安になっていませんか。高齢の親が避難を嫌がるのは、わがままではなく、ちゃんと理由があることがほとんどです。そして、その理由は当日の説得ではなく、ふだんの段取りで小さくできます。この記事では、親が避難を拒否する理由と、無理に言い負かさずに動いてもらうための準備、当日の声かけ、家にいてよいときと動くべきときの見分け方をまとめます。

こんな場面が心配ではありませんか
  • 「私は行かない」と言い張る
  • 話すほど意固地になる
  • 夫の言うことしか聞かない
  • 自分一人では連れ出せない
  • 置いて行くこともできない
義母の避難に悩む読者のイラストアイコン
読者

義母は「前の台風のときも大丈夫だった」と言って、避難の話をすると不機嫌になります。いざというとき、私の言うことを聞いてくれる気がしません。

災害医療の修士号をもつ防災士である管理人のイラストアイコン
管理人

当日に説得しようとすると、どうしても言い合いになりがちです。あなたの伝え方が悪いのではありません。「行く・行かない」を当日に決めなくて済むように、先に段取りを組んでおきましょう。

今日ひとつだけやるなら、義母に「もしものとき、どこなら行ってもいいと思う?」と、ひとこと聞いてみてください。答えが「どこにも行かない」でも構いません。本人の気持ちを知ることが、すべての段取りの出発点になるからです。

高齢者が避難を拒否する理由

「行きたくない」という言葉の裏には、たいてい具体的な心配が隠れています。足が痛い、トイレが近い、人に迷惑をかけたくない、といったことです。本人もうまく言葉にできず、「行かない」の一言でまとめてしまうことがよくあります。理由が分かれば、説得ではなく「その心配を減らす準備」で応えられます。多い理由を4つに分けて見ていきましょう。

家族に迷惑をかけたくない

足の弱い方ほど、「自分がいると家族が逃げ遅れる」と考えがちです。だから「私はいいから、あなたたちだけ行って」と言います。遠慮から出た言葉なので、強く言われるほど引っ込みがつかなくなることもあるでしょう。

避難所での暮らしが不安

床で寝ること、トイレが遠いこと、知らない人の中で過ごすことは、高齢の方にとって大きな負担です。とくにトイレの回数が多い方は、周りに気をつかって水を控えてしまうこともあります。避難所の暮らしで何がつらくなりやすいかは、高齢者の避難所生活は大変 在宅避難という選択肢で詳しく紹介しています。

前は大丈夫だったという経験

長く同じ家に住んでいる方ほど、「これまで何度も台風が来たけれど平気だった」という経験を持っています。この経験は本人にとって何より確かな根拠です。ただ、雨の降り方や周りの環境は昔と変わっていることがあり、過去の経験がそのまま当てはまるとは限りません。

体がつらく準備も面倒

荷物をまとめる、着替える、靴をはく、車に乗る。元気な人には何でもない動きが、足腰の弱い方には一つずつ重い作業です。「面倒だから行かない」は、実は「体がついていかない」の言いかえであることも少なくありません。

「行かない」の裏にある本音
  • 足手まといになりたくない
  • 床で眠れる自信がない
  • トイレが近くて心配
  • 今まで大丈夫だった
  • 支度だけで疲れてしまう

避難を拒否する親を動かす段取り

避難を嫌がる親に、当日その場で「行こう」と言っても、なかなか動いてもらえません。気持ちの整理がつかないうえに、体の準備も間に合わないからです。大事なのは、「行くかどうか」をふだんのうちに決めておき、当日は決めたとおりに動くだけにすることです。ここでは、平常時にできる段取りを4つ紹介します。

行き先を本人と一緒に決める

避難先は、学校の体育館だけではありません。浸水や土砂の心配がない親戚や知人の家、近くのホテルなども選択肢になります。「避難所は嫌」でも「娘の家なら行く」という方は多いものです。行ってもいい場所を本人に選んでもらうと、自分で決めたことなので当日も動きやすくなるでしょう。

動く合図を先に決めておく

「雨が強くなったら」のようなあいまいな合図では、その場で迷いが生まれます。「高齢者等避難(警戒レベル3)が出たら動く」のように、はっきりした合図を家族で決めておきましょう。レベル3の意味は警戒レベル3=高齢者等避難の意味と動き方で詳しく説明しています。

持ち物を先にまとめておく

当日に荷物をまとめる作業がなくなるだけで、避難のハードルはぐっと下がります。薬、お薬手帳、メガネ、入れ歯、着替えなど、本人が「これがないと困る」と思う物を、一緒に袋へ入れておきましょう。中身の選び方は足の弱い高齢者の持ち出し袋の中身と減らし方が参考になります。

話す人を家族以外にも広げる

家族の言葉には反発しても、ケアマネジャーやかかりつけ医、民生委員の言葉なら素直に聞く方は少なくありません。個別避難計画を作る場で第三者から話してもらうと、「みんなで決めたこと」として受け入れやすくなります。相談の進め方は個別避難計画の作り方と相談先の全手順にまとめています。

避難を嫌がる親と平常時に行き先と合図と持ち物を決めておき当日は決めたとおりに動くだけにする段取りを示す図解
避難を嫌がる親と平常時に行き先と合図と持ち物を決めておき当日は決めたとおりに動くだけにする段取りを示す図解

行きたくない親への声かけ

段取りを決めていても、当日になると「やっぱり行かない」と言われることがあります。そんなときは、正しさで言い負かそうとしないことが大切です。言い合いになると本人は意地になり、かえって時間がかかってしまいます。命令ではなく「お願い」、理由は「あなたのため」より「私のため」で伝えると、受け止めてもらいやすくなります。使いやすい声かけを4つ紹介します。

家族の安心のためと伝える

「危ないから行って」と言われると、本人は「自分は大丈夫」と反論したくなります。一方で「お義母さんが家にいると、私が心配で落ち着かないの」と言われると、断りにくいものです。本人の判断を否定せず、家族の気持ちとして伝えましょう。

一晩だけと期限を区切る

「いつ帰れるか分からない」という不安も、動けない理由の一つです。「今夜だけ」「雨がやんだら帰ってこよう」と期限を区切って伝えると、気持ちの負担が軽くなります。空振りに終わっても、「何もなくてよかったね」と言える準備だと考えましょう。

理由は一つに絞って話す

あれこれ理由を並べると、本人は一つずつ反論を探し始めます。「この家は川に近いから、今夜だけは高い所にいてほしい」のように、いちばん伝えたい理由だけを短く話しましょう。耳が遠い方には、紙に書いて見せるのも一つの方法です。

本人の心配ごとを先に片づける

「トイレが心配」なら携帯トイレを持って行く、「眠れない」なら慣れた枕を持って行く、というように、本人が口にした心配を一つずつ解消してから誘います。心配が消えれば、「それなら行こうか」と自分から言ってくれることもあるでしょう。

伝わりやすい声かけの例
  • 「私が安心したいから」
  • 「今夜だけでいいから」
  • 「枕も持って行こうね」
  • 「〇〇さんも行くって」
避けたい言い方
  • 「わがまま言わないで」
  • 「死んでも知らないよ」
  • 何度も同じ説明をくり返す
  • 腕を引っぱって連れ出す

家にいてよいときと動くとき

親が「家にいたい」と言うとき、それが必ずしも間違いとは限りません。家が安全な場所にあり、建物も丈夫なら、住み慣れた家で過ごす在宅避難は、高齢の方にとって負担の少ない選択です。だからこそ、「家にいてよい家」か「移るべき家」かを、先にハザードマップで確かめておくことが大切です。判断の目安を3つに分けて紹介します。

家が安全なら在宅避難も選べる

浸水や土砂災害の危険がない地域で、家が壊れておらず火も出ていなければ、無理に避難所へ移る必要はありません。この場合は、「行きたくない」を受け止めて、家で過ごすための備えに力を注ぐほうが現実的です。自宅の危険度はハザードマップの見方 自宅の危険度を確認する手順で5分ほどで確かめられます。

浸水や土砂の心配があれば移る

家が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているなら、雨が強くなる前に、安全な場所へ移ることを考えましょう。この場合こそ、先に決めておいた行き先と合図が役に立ちます。ハザードマップを本人と一緒に見て、「この家はここに入っている」と目で確かめてもらうと、納得につながりやすくなります。

どうしても動かないときの次の手

それでも本人が動かないときは、一人で抱え込まず、ケアマネジャーや市区町村の防災担当課、民生委員に早めに相談してください。無理に抱えて連れ出そうとすると、本人も家族も転んでけがをするおそれがあります。緊急のときの対応は地域によって違うため、平常時のうちにお住まいの市区町村で確認しておくと安心です。

ハザードマップで自宅が浸水や土砂の区域に入っているかを確かめ危険がなければ在宅避難を選び危険があれば先に決めた行き先へ移る判断の流れを示す図解
ハザードマップで自宅が浸水や土砂の区域に入っているかを確かめ危険がなければ在宅避難を選び危険があれば先に決めた行き先へ移る判断の流れを示す図解

よくある質問

高齢の親が避難を嫌がるときについて、よく寄せられる疑問をまとめました。親が動いてくれないのは、あなたの力不足のせいではありません。避難の仕組みや相談先は自治体によって違うため、細かい点はお住まいの市区町村で確認してください。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。

避難を拒否されたら置いて行ってもいいですか

まずは、本人を置いて行かなくて済むように、ふだんの段取りで備えることが第一です。そのうえで、家族も含めて危険が迫っていると感じたら、ためらわずに消防や市区町村に助けを求めてください。家族だけで背負わず、どう動くかを平常時にケアマネジャーや市区町村と話し合っておきましょう。

認知症があって話が通じにくいときは

認知症のある方には、理由を説明するより「一緒にお出かけしよう」と短く誘うほうが伝わることがあります。環境の変化に戸惑いやすいので、慣れた物を持って行くのも一つの方法です。詳しくは認知症の家族と避難する具体的な方法をご覧ください。

夫の言うことしか聞かないのですが

それなら、夫から伝えてもらうのが近道です。ただ、夫が防災に関心を持っていない場合もあるでしょう。夫を巻き込む方法は防災に協力しない家族の巻き込み方と頼み方で紹介しています。

避難所以外に行ける場所はありますか

安全な場所にある親戚や知人の家、ホテルなども避難先になります。自治体によっては、高齢の方や障害のある方を受け入れる福祉避難所を用意しているところもあります。ただし、直接行けない場合もあるため、使い方はお住まいの市区町村で確認してください。

空振りで避難したら文句を言われそうです

何も起きなかったときに「行かなくてよかったじゃないか」と言われるのはつらいものです。それでも、空振りは失敗ではありません。「何もなくてよかったね」と声をかけ、次も同じように動けるように、行ってみて困ったことを一緒に振り返りましょう。

まとめ

高齢の親が避難を拒否するのは、迷惑をかけたくない、避難先の暮らしが不安、体がつらいといった理由があるからです。当日に説得するのではなく、行き先・合図・持ち物をふだんのうちに本人と決めておく。これだけで、いざというときの「行かない」はずっと小さくなります。

この記事の振り返り
  • 拒否の裏には具体的な心配
  • 行き先は本人と一緒に選ぶ
  • 動く合図はレベル3
  • 持ち物は先にまとめる
  • 家族以外の人から話してもらう
  • 家にいてよいかは地図で確認

今日は、義母に「もしものとき、どこなら行ってもいいと思う?」と聞いてみてください。費用はかかりません。答えが返ってきたら、その場所が安全な地域にあるかを、ハザードマップで一緒に確かめておきましょう。一人で決めきれないときは、担当のケアマネジャーに「避難のことも相談したい」と伝えるだけでも、次の一歩になります。

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