地域の防災訓練には、足の悪い義母を連れて行けない。かといって、家で何をすればいいのかも分からない。そう感じていませんか。訓練に参加できないのは、あなたや家族の意識が低いからではなく、会場まで行くこと自体が高齢の家族には大きな負担だからです。この記事では、家の中でできる避難の練習を、1回5分から始められる形でまとめます。
- 地域の訓練に義母を連れて行けない
- 家で何を練習すればいいか不明
- 練習で転ばせないか心配
- 家族を集めるのが難しい
- 本番で自分が動けるか不安

訓練って、みんなで集まって大がかりにやるものだと思っていました。義母と2人で何ができるのか想像がつきません。

家の中で、いつもの動きを1つ確かめるだけで立派な訓練になります。寝室から玄関まで一緒に歩いてみる、それだけでも気づくことがたくさんあります。
今日ひとつだけやるなら、義母の寝室から玄関まで、いつもの速さで一緒に歩いてみてください。途中で引っかかった場所を1つ覚えておくだけで十分です。
家庭での防災訓練が役立つ理由

災害のときは、頭で考えるより先に、体が覚えている動きが出ます。一度でも通ったことのある道は、慌てていても思い出しやすくなります。家庭での訓練は、その「一度」を安全なときに作っておくためのものです。
体が覚えた動きは本番でも出る
揺れや停電のさなかに、初めての動きを正しく行うのは誰にとっても難しいものです。一度練習した動きであれば、「前にやったとおりに」と思い出せるため、判断に迷う時間を減らせる可能性があります。
家の中の通れない場所に気づける
ふだん何気なく歩いている廊下も、杖をついた義母と2人で並ぶと狭く感じることがあります。置きっぱなしの荷物や、夜は見えにくい段差など、実際に歩いてはじめて分かることが少なくありません。
高齢の家族本人の不安が小さくなる
「いざというときはこう動く」と本人が知っているだけで、気持ちの落ち着き方が変わります。義母自身が手順を知っていれば、あなたが不在のときにも、できる範囲で身を守る動きにつながります。
高齢者と家庭でできる防災訓練

家庭でできる訓練は、大きく4つに分けられます。全部を一度にやる必要はなく、1回の練習では1つだけで構いません。義母の体調がよい日を選び、できそうなものから試してみましょう。
- 揺れたときに身を守る姿勢
- 寝室から玄関まで歩く
- 持ち出す物を手に取る
- 家族への声かけと合図
揺れたときに身を守る練習
床にしゃがむ姿勢は、膝や腰が弱い方には負担が大きく、かえって転倒の原因になりかねません。ベッドや椅子に座ったまま、クッションや枕で頭を守る形を練習しておくと、義母の体に合った守り方になります。
寝室から玄関まで歩く練習
いつもの杖を使い、寝室から玄関まで一緒に歩いてみます。かかった時間を測る必要はありません。どこで立ち止まったか、どこで手を貸したくなったかを覚えておくことが目的です。
持ち出す物を手に取る練習
お薬手帳やメガネ、補聴器など、義母が手放せない物を、決めた場所から取って玄関まで持っていきます。置き場所が遠い、重くて持てないといった問題は、実際に手に取ってみると見つかります。
家族への声かけと合図の練習
耳が遠い方には、大きな声より、正面から肩に軽く触れて顔を見て話すほうが伝わりやすいことがあります。「揺れたら枕で頭」「出るときは杖を持つ」など、短い合言葉を決めて一度声に出してみましょう。

訓練で見つかる家の中の課題

練習をすると、家の中の「困りごと」がいくつか見つかるはずです。見つかった課題は失敗ではなく、本番の前に分かってよかった収穫です。多くの家庭で見つかりやすいものを挙げておきます。
- 廊下に置いた荷物や段ボール
- 夜は見えない足元の段差
- 玄関で履きにくい靴
- 遠すぎる持ち出し品の置き場所
通り道に置いてある物
廊下の荷物や、床を這う電気コードは、杖の先が引っかかりやすい場所です。一度に片付けようとせず、寝室から玄関までの通り道だけを空けることから始めると、負担が少なく済みます。
夜の暗さと足元
地震は夜中に起きることもあります。明るい昼間に歩けた道でも、停電した夜は段差が見えません。足元を照らす小さな明かりを、寝室と廊下に1つずつ置いておくと安心につながります。
玄関の段差と靴
上がり框で靴を履く動作は、高齢の方には転びやすい場面です。座って履ける場所があるか、かかとを踏まずに履ける靴があるかを、練習のついでに確かめておきましょう。
夜中の地震での動き方は真夜中に地震が来たときの判断の手順で、靴と足元の備えは高齢者の避難で見落としがちな靴と足元の備えで詳しく説明しています。
安全に続けるための進め方

家庭での訓練は、けがをしないことが何よりも大切です。痛みや息苦しさが出たら、その場ですぐに中止してください。無理のない範囲で、できる人だけが行うことを前提に進めましょう。
- 痛みや息苦しさが出たとき
- ふらつきやめまいがあるとき
- いつもより顔色が悪いとき
- 本人が嫌がっているとき
持病があれば先に相談する
心臓や呼吸器の病気がある方、最近転んだことがある方は、練習を始める前に、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。どこまで動いてよいかを確認しておくと、家族も安心して見守れます。
1回5分で1つだけにする
一度にいくつも練習すると、疲れて転びやすくなります。1回は5分ほど、練習は1つだけにしましょう。短く終わるほうが、本人も「またやってもいい」と思いやすくなるものです。
日付を決めて年に数回くり返す
防災の日(9月1日)や年末の大掃除など、覚えやすい日に合わせると続けやすくなります。練習のあとに、気づいたことを1行だけメモしておけば、次回はその点から確認できます。

練習で分かったことは、個別避難計画の作り方と相談先の全手順で紹介している計画づくりにも、そのまま生かせます。
よくある質問

家庭での防災訓練について、よくある疑問をまとめました。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。体のことで迷ったときは、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。
地域の防災訓練に参加しなくても大丈夫ですか
参加が難しい場合は、家庭での練習だけでも意味があります。可能であれば、あなた1人だけでも地域の訓練に顔を出しておくと、避難所の場所やご近所の様子が分かります。
義母が「そんなことしなくていい」と嫌がります
「訓練」と言わず、「夜のトイレまでの道を確かめたい」のように、ふだんの暮らしの話として誘うと受け入れられやすくなります。本人が嫌がる日は、無理にやらなくて構いません。
夫や子どもが参加してくれません
全員そろわなくても始められます。あなたと義母の2人で練習した結果を、「廊下の段ボールが危なかった」など具体的に伝えると、家族も手を貸しやすくなるでしょう。
夜の暗い中でも練習したほうがいいですか
昼間の練習に慣れてからで十分です。夜に行う場合は、照明を消さずに廊下の明かりだけにするなど、段階を踏んでください。暗い中での練習は転倒の危険が高いため、必ず付き添いましょう。
車いすを使っている場合はどうすればいいですか
車いすで通れる幅があるか、玄関の段差を越えられるかを、介助する人と一緒に確かめます。車いすでの避難経路の確認は、高齢者と車いすの避難経路 確認の手順も参考にしてください。
まとめ

家庭での防災訓練は、大がかりな準備がなくても始められます。寝室から玄関まで一緒に歩き、引っかかった場所を1つ見つけることが、義母と2人でも落ち着いて動くための備えになります。完璧でなくて構いません。できることを1つずつ積み重ねていきましょう。
- 訓練は家の中でもできる
- 1回5分で練習は1つだけ
- 身を守る姿勢は座ったままで
- 見つかった課題は収穫
- 痛みや息苦しさが出たら中止
- 持病があれば先に相談
今日は、義母の体調がよければ、寝室から玄関まで一緒に歩いてみてください。費用も道具もいりません。歩いてみて気づいたことを家族に1つ伝えれば、それが家族みんなの次の一歩になります。


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