足の弱い義母と、長年いっしょに暮らしてきた犬や猫。災害のとき、両方を連れて避難所へ行けば、みんなで同じ場所にいられると思っていませんか。「同行避難」は、ペットと一緒に安全な場所まで逃げることを指す言葉で、避難所の中で同じ部屋に過ごせるという意味ではありません。この誤解に当日気づくと、高齢の家族とペットのどちらを優先するかで、その場で迷うことになります。この記事では、同行避難の本当の意味と、高齢の家族とペットの両方がいる家が、在宅避難を軸に行き先をどう組み立てるかをまとめます。
- 避難所で犬と離れたくない
- 義母と犬を一人で連れ出せない
- 義母が「犬を置いて行けない」
- 鳴き声で迷惑をかけそう
- どこに相談すればいいか不明

義母は犬をとてもかわいがっていて、「この子を置いて行くくらいなら家に残る」と言います。でも避難所にペットを連れて行っていいのかも、よく分かっていません。

ペットを家族と思う気持ちは、避難をためらう大きな理由になります。あなたの家が特別なのではありません。避難所で何ができて何ができないかを先に知り、行き先を家族とペットの両方で考えておきましょう。
今日ひとつだけやるなら、お住まいの市区町村のホームページで「ペット 避難」と検索し、近くの避難所がペットをどう受け入れているかを確かめてみてください。受け入れ方が分かるだけで、家で過ごすか、どこへ移るかを考えやすくなるはずです。
ペットの同行避難とは

同行避難という言葉は、環境省のガイドラインで使われています。災害が起きたとき、飼い主がペットを連れて安全な場所まで一緒に避難することを指しています。「一緒に逃げる」ことと「避難所の中で一緒に過ごす」ことは、別のことだと考えてください。そして、連れて行くための準備は、飼い主がすることになっています。誤解されやすい点を3つに分けて見ていきましょう。
同行避難は一緒に逃げること
同行避難は、ペットを家に置いたまま逃げないようにするための考え方です。過去の大きな災害では、置いて行かれたペットが取り残されたり、飼い主がペットを迎えに戻って危険な目にあったりしました。そのため、まずはペットと一緒に安全な場所へ向かうことが勧められています。
同じ部屋で過ごせるとは限らない
避難所には、動物が苦手な人やアレルギーのある人もいます。そのため、多くの避難所では、ペットは人の居場所とは別の場所で、ケージに入れて過ごすことになります。飼い主とペットが同じ空間で過ごすことは「同伴避難」と呼ばれ、それができる避難所はまだ一部にとどまるでしょう。
受け入れ方は避難所ごとに違う
ペットをどこに置くか、どんな動物まで受け入れるかは、自治体や避難所によって大きく違います。屋外のテントの場合もあれば、校舎の一室を使う場合もあります。受け入れの決まりはお住まいの市区町村で確認してください。防災担当課や、動物の担当課に問い合わせると教えてもらえます。

高齢者とペットがいる家の悩み

ペットだけ、あるいは高齢の家族だけなら、避難の段取りはまだ組み立てやすいものです。ところが両方がいる家では、手が足りない、避難先で離れて過ごす負担が重い、といった悩みが重なります。避難をためらうのは、家族を大切に思っているからこそです。どんなところでつまずきやすいのか、先に知っておきましょう。
両方を同時に連れ出せない
杖歩行の義母の手を引きながら、キャリーバッグに入れた猫や、リードをつけた犬を連れて歩くのは、一人ではとても大変です。荷物も人の分とペットの分で2倍になります。日中に家族が一人しかいない時間帯ほど、この問題は大きくなるでしょう。
離れて過ごすことが親の負担に
ペットが心の支えになっている高齢の方は少なくありません。避難所でペットと別々に過ごすと、ペットの様子が気になって眠れなかったり、何度もペットの場所まで歩いて疲れてしまったりすることがあります。避難所の暮らしそのものが高齢の方に負担をかけることは、高齢者の避難所生活は大変 在宅避難という選択肢でも紹介しています。
ペットを理由に親が動かない
「この子を置いて行けない」「連れて行けないなら家に残る」と、高齢の親がペットを理由に避難を嫌がることもあります。この言葉は、わがままではなく、家族への思いから出たものです。親が避難を嫌がるときの段取りは、高齢者の避難拒否 説得より段取りで動かすが参考になります。
- 介助とリードで両手がふさがる
- 荷物が人とペットで2倍
- 避難所でペットと別々
- 鳴き声やにおいへの気づかい
- 親がペットを理由に残る
在宅避難を軸にした選び方

高齢の家族とペットの両方がいる家では、「避難所へ行く」を最初の答えにしないほうが、無理のない計画になりやすいものです。家が安全な場所にあれば、住み慣れた家で人もペットも一緒に過ごす在宅避難は、心と体の負担が小さい選択になります。まず自宅が安全かを確かめ、家にいられるならそのための備えを、移るなら行き先を先に決めておきましょう。組み立て方を4つの手順で紹介します。
家が安全かを地図で確かめる
自宅が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかを、ハザードマップで確かめます。入っていなければ、在宅避難を第一の選択肢にできます。地震のあとは、家が傾いていないか、火が出ていないかも確認しましょう。地図の見方はハザードマップの見方 自宅の危険度を確認する手順で紹介しています。
家にいるならペットの分も備える
在宅避難を選ぶなら、人の水や食料と一緒に、ペットのフードや水、トイレ用品も備えておきます。フードは食べ慣れたものを、少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安とされています。持病のあるペットは、療法食や薬も忘れずに用意しておきましょう。
移る先は避難所以外も用意する
家が危険な区域にあるなら、避難所だけでなく、ペットも一緒に行ける行き先を複数考えておきます。浸水の心配がない親戚や知人の家、ペットと泊まれる宿などが候補です。ふだん通っている動物病院やペットホテルに、災害時にあずかってもらえるかを聞いておくのも一つの方法でしょう。
誰が親を 誰がペットを連れるか
家族が複数いるときは、「義母の介助は私、犬は子ども」のように役割を先に決めておくと、当日に迷いません。一人しかいない時間帯に備えて、ペットを先に安全な場所へあずけておく、近所の人に声をかけておくといった手も考えておきましょう。ご近所との約束の仕方は近所の助け合い 高齢者の防災で決めておくことにまとめています。

同行避難に備える準備

在宅避難を軸にしていても、家が壊れたときなど、ペットを連れて移らなければならない場面はありえます。そのとき慌てないためには、ペットが避難先で落ち着いて過ごせるように、ふだんから少しずつ準備をしておくことが大切です。準備は一度にそろえなくて大丈夫です。今日できることから一つずつ進めましょう。代表的な準備を4つ紹介します。
ケージやキャリーに慣らす
避難所では、ペットはケージやキャリーバッグの中で過ごすことが多くなります。ふだんから中で休む習慣をつけておくと、慣れない場所でも落ち着きやすくなるでしょう。扉を開けたまま部屋に置き、中におやつを入れるところから始めると、無理なく慣らせます。
迷子札と写真で見分けられるように
災害時は、ペットが驚いて逃げ出し、はぐれてしまうことがあります。首輪に迷子札をつけ、飼い主の連絡先を書いておきましょう。マイクロチップを入れている場合は、登録している連絡先が今のものか確かめておきます。ペットの写真をスマートフォンと紙の両方に残しておくと、探すときの手がかりになります。
ワクチンと健康の記録をそろえる
避難先では、ほかの動物と近い場所で過ごします。狂犬病の予防注射や混合ワクチン、ノミ・ダニの予防を済ませておくと、受け入れてもらいやすくなります。接種の記録や、持病と薬の名前を書いたメモを、ペット用の持ち出し品に入れておきましょう。
ペットの持ち出し品は別の袋に
人の持ち出し袋にペットの物まで入れると、重くて持てなくなります。フード、水、トイレ用品、リード、食器などは、ペット用の袋にまとめて分けておくと、家族で分担して運べます。人の持ち出し袋の中身は、足の弱い高齢者の持ち出し袋の中身と減らし方を参考にしてください。
- 食べ慣れたフードと水
- 療法食と薬
- トイレ用品とビニール袋
- リードと食器
- ワクチンの記録
- ペットの写真
よくある質問

高齢の家族とペットがいる家の避難について、よく寄せられる疑問をまとめました。ペットを大切に思うことは、避難の妨げではなく、備えを始める理由になります。ペットの受け入れ方は自治体によって違うため、細かい点はお住まいの市区町村で確認してください。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
避難所にペットを連れて行ってもいいですか
多くの自治体では、ペットと一緒に避難所へ向かう同行避難を勧めています。ただし、受け入れ方や場所は避難所ごとに違い、受け入れていないところもあります。お住まいの地域の避難所がどうなっているかを、平常時のうちに市区町村で確認しておきましょう。
猫や小鳥も同行避難できますか
犬だけでなく、猫や小鳥、うさぎなども、キャリーやケージに入れれば受け入れている避難所があります。一方で、爬虫類や大型の動物などは受け入れが難しいこともあります。飼っている動物の種類を伝えて、市区町村に問い合わせてみてください。
車の中で過ごすのはどうですか
ペットと一緒にいられるため、車中泊を選ぶ家庭もあります。ただ、狭い座席で長く同じ姿勢でいると、足の血の流れが悪くなり、体調をくずすおそれがあります。こまめに水分をとり、ときどき足を動かしましょう。持病のある方は、かかりつけ医に相談しておくと安心です。
親がペットを置いて行けないと言います
その気持ちを否定せず、「この子も一緒に行ける方法を考えよう」と伝えてみてください。ペットも行ける行き先や、あずけ先を一緒に決めておくと、親も安心して動けるようになります。ケアマネジャーに相談すると、個別避難計画の中でペットのことも考えてもらえる場合があります。
ペットの受け入れはどこで確認できますか
市区町村のホームページや、防災マップ、地域防災計画に書かれていることがあります。見つからないときは、市区町村の防災担当課や動物の担当課に電話で問い合わせてみましょう。かかりつけの動物病院が、地域の情報を知っていることもあります。
まとめ

同行避難は、ペットと一緒に安全な場所まで逃げることで、避難所で同じ部屋に過ごせるという意味ではありません。高齢の家族とペットがいる家は、まず自宅が安全かを確かめ、家にいられるなら人とペットの両方の備えを、移るならペットも行ける行き先を先に決めておく。この順番で考えれば、当日に「どちらを優先するか」で迷わずに済みます。
- 同行避難は一緒に逃げること
- 避難所では多くが別の場所
- 受け入れは避難所ごとに違う
- 家が安全なら在宅避難が軸
- 移る先は避難所以外も用意
- ケージ慣れと迷子札が準備の基本
今日は、お住まいの市区町村で近くの避難所のペットの受け入れ方を確かめてみてください。費用はかかりません。あわせて、ペットの写真をスマートフォンで1枚撮っておくと、はぐれたときの手がかりになります。ペット用の持ち出し袋をまだ用意していない方は、写真を入れておける防災バッグも選択肢の一つです。


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