大きな災害のあと、いつも来てくれるデイサービスの送迎車が来ない。ヘルパーさんとも連絡がつかない。義母と二人きりの時間が、いつ終わるのか分からないまま続いていく。そんな場面を想像して、不安になっていませんか。災害のあとに介護サービスが止まるのは珍しいことではなく、あなたの準備不足のせいではありません。止まる数日をどう過ごすかを先に決めておけば、家族だけの時間もずっと落ち着いて乗り切れます。この記事では、その具体的な手順をまとめます。
- デイが休みだと一日中つきっきり
- お風呂に入れられるか不安
- いつ再開するのか分からない
- 自分が休む時間がなくなる
- 誰に相談すればいいか分からない

ふだんはデイサービスがあるから何とか回っているんです。災害で何日も休みになったら、私ひとりで義母の介護ができるのか自信がなくて。

そう感じるのは、ふだんからしっかり介護を担っている証拠です。全部をいつもどおりにする必要はありません。止まる数日だけの「簡単な過ごし方」を決めておけば十分です。
今日ひとつだけやるなら、次にケアマネジャーと話すときに「災害でデイが休みになったら、どこから連絡が来ますか」と聞いてみてください。その答えがあるだけで、いざというときの迷いが一つ減ります。
災害時にデイサービスが休みになる理由

災害のあと、デイサービスや訪問介護などの介護サービスが一時的に休みになることがあります。事業所も利用者を守ろうと動いていますが、建物や道路、働く人そのものが被災するため、ふだんどおりには動けないのです。休みになる理由を知っておくと、「見捨てられた」と感じずに、家での数日に気持ちを切りかえられます。主な理由を3つ見ていきましょう。
送迎の道や車が使えない
デイサービスの多くは送迎があって成り立っています。道路の通行止めや渋滞、ガソリン不足が起きると、車を安全に走らせることができません。利用者の安全を考えて、送迎を止める判断をする事業所は少なくないでしょう。
職員も被災している
介護の仕事をしている職員も、地域に暮らす住民の一人です。自宅が被災したり、自分の家族の世話が必要になったりして、出勤できる人が減ることがあります。人手が足りないまま無理に開けると、かえって利用者を危険にさらしてしまいます。
建物やライフラインが止まる
停電や断水があると、入浴や食事、トイレの介助ができません。建物の点検が必要になることもあります。再開までの日数は、被害の大きさや地域によって大きく違うため、数日で再開することもあれば、もっと長くかかることもあるのです。
- デイサービスの通所と送迎
- ヘルパーの訪問
- 訪問入浴
- ショートステイの受け入れ
介護サービスが止まると家で起きること

デイサービスは、入浴や昼食、体操、話し相手など、多くの役割をまとめて担ってくれています。それが一度に止まると、家族の負担が急に増えるだけでなく、本人の体や気持ちにも変化が出やすくなります。何が止まるのかを先に書き出しておくと、代わりにどうするかを落ち着いて考えられます。家の中で起きやすいことを整理しておきましょう。
入浴と清潔を保つ場がなくなる
家のお風呂で入浴するのが難しく、デイサービスでの入浴に頼っている家庭は多いものです。そこが止まると、体を清潔に保つ方法を家で考えなければなりません。断水が重なれば、なおさら工夫が必要になります。
日中ずっと二人きりになる
デイサービスに通っている時間は、家族にとって用事を済ませたり、少し休んだりできる大切な時間でもあります。その時間がなくなると、朝から晩まで気が抜けません。家族の疲れがたまると、介護の手が荒くなったり、体調を崩したりする心配も出てきます。
本人の生活リズムが崩れる
通う日があることで、朝起きて着替え、出かけるという一日の流れができています。休みが続くと、横になる時間が増え、昼夜が逆になることもあるでしょう。動かない日が続いて体力が落ちる心配については、災害時の高齢者の体力低下 在宅避難でできる予防で詳しく説明しています。
災害時デイサービスが休みのときの介護

サービスが止まっている間の介護は、ふだんと同じ水準を目指さなくて大丈夫です。目標は「いつもどおり」ではなく「再開まで大きく崩さない」ことです。家族だけで回すための工夫を、1日の流れ、清潔、役割、家族の休み方の4つに分けて紹介します。
- 起きる・食べる・寝る時間
- 体を拭いて清潔を保つ
- 本人に頼める役割
- 家族が交代で休む時間
1日の流れをざっくり決める
デイサービスに通う日の時間割を思い出し、起床、食事、昼の休憩、就寝の時間だけでも同じにしましょう。細かい予定は要りません。「朝は着替える」「お昼は居間で食べる」と決めておくだけで、本人も家族も一日の見通しが立ちやすくなります。
お風呂の代わりに体を拭く
入浴できない日は、温かいタオルで体を拭く「清拭(せいしき)」で清潔を保てます。顔と手、首まわり、脇の下、陰部やお尻など、汚れやすいところから先に拭くと短い時間で済むでしょう。寒い部屋で肌を長く出すと体が冷えるため、拭いたところからすぐに服を着せます。本人が痛がったり、息苦しさや寒気を訴えたりしたら、その場でやめてください。持病や床ずれがある場合は、やり方をケアマネジャーや訪問看護師に相談しておくと安心です。
本人にできる役割を頼む
洗濯物をたたむ、ラジオのニュースを教えてもらう、備蓄の数を数えるなど、座ったままできる用事を頼みましょう。役割があると、本人も「迷惑をかけている」という気持ちから少し離れられます。話し相手になる時間は、デイサービスでのおしゃべりの代わりにもなるのです。
家族で交代して休む
一人で丸一日を抱えないよう、夫や子どもと時間を区切って交代しましょう。「夕方の1時間だけ見ていて」のように、頼む時間と内容を具体的にすると引き受けてもらいやすくなります。家族への頼み方は防災に協力しない家族の巻き込み方と頼み方も参考にしてください。

ケアマネジャーと今決めておくこと

災害が起きてから相談しようとしても、電話がつながりにくく、ケアマネジャー自身も対応に追われています。だからこそ、平常時の面談の機会に、少しだけ災害時の話をしておくのが効果的です。聞いておくことは、連絡の方法と、止まったときの代わりの支援の2つで十分です。ここでは、決めておきたいことを順に紹介します。
災害時の連絡の取り方
災害で休みになったとき、事業所から電話が来るのか、家族から確認するのかを聞いておきましょう。事業所やケアマネジャーの電話番号は、スマホだけでなく紙にも書いて冷蔵庫などに貼っておきます。電話が通じないときの連絡手段も、あわせて確認しておくと安心です。
再開の知らせの受け取り方
再開の見通しがどこから届くのかを知っておくと、先の見えない不安がやわらぎます。事業所によっては、安否確認の電話と一緒に再開の予定を伝えてくれることもあるでしょう。自分から問い合わせてよいかどうかも、聞いておくと遠慮せずに済みます。
止まったときに頼れる支援
家族だけで続けるのが難しくなったときに、どんな支援が考えられるかを相談しておきましょう。別の事業所の利用や、ショートステイ、福祉避難所などが候補になることがあります。ただし、使える支援や手続きは自治体によって大きく違うため、お住まいの市区町村で確認してください。福祉避難所の仕組みは福祉避難所とは 使い方と頼れる範囲でまとめています。
本人の情報を1枚にまとめる
ふだんの介助のやり方、飲んでいる薬、食事の形、トイレの様子などを1枚の紙にまとめておきます。家族の誰かが代わりに介護するときや、別の支援を受けるときにも、そのまま渡せます。薬の備えは高齢の親の防災の備えと常備薬の持ち出し方が参考になります。
- 休みの連絡はどこから来るか
- 電話が通じないときの連絡先
- 再開の見通しの知らせ方
- 家族だけで難しいときの相談先

災害時の支援を前もって決めておく仕組みには、個別避難計画もあります。作り方は個別避難計画の作り方と相談先の全手順をご覧ください。
よくある質問

災害でデイサービスが休みになったときの介護について、よくある疑問をまとめました。家族だけで抱えきれないと感じたら、それは相談してよい合図です。相談先は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の福祉の窓口です。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
ケアマネジャーに電話がつながりません
災害直後は電話が集中し、つながりにくくなります。時間をおいてかけ直すか、地域包括支援センターや市区町村の福祉の窓口に相談してみましょう。避難所に相談窓口が置かれることもあります。
何日くらいで再開しますか
再開までの日数は、被害の大きさや地域、事業所によって違うため、一概には言えません。だからこそ、数日から1週間ほどを家族で過ごすつもりで備えておくと、気持ちに余裕が生まれます。
お風呂に入れない日が続いても大丈夫ですか
毎日入浴できなくても、体を拭いて清潔を保てば、多くの場合は大きな問題になりにくいとされています。ただし、皮膚が赤くなっている、かゆみや痛みを訴えるなどの変化があれば、早めにかかりつけ医や訪問看護師に相談してください。
代わりに別の事業所を使えますか
地域によっては、被災していない事業所が受け入れてくれることもあります。利用には手続きや調整が必要なため、まずはケアマネジャーに相談してください。対応は自治体や事業所によって違います。
介護をしている私が倒れたらどうなりますか
その心配はとても大切です。だからこそ、家族で交代して休む時間を先に決め、あなたが倒れたときに誰に連絡するかを紙に書いておきましょう。本人の情報を1枚にまとめておけば、代わりの人がすぐに介護を引き継げます。
まとめ

災害のあとに介護サービスが止まるのは、事業所も地域も被災しているからです。家族が完璧に代わりを務める必要はありません。1日の流れを決め、体を拭き、交代で休み、困ったら相談する。この4つがあれば、止まる数日を大きく崩さずに乗り切れます。
- 休みになるのは事業所も被災するから
- 目標は再開まで大きく崩さないこと
- 入浴の代わりは清拭で
- 家族で交代して休む
- 連絡方法をケアマネジャーと確認
- 本人の情報を紙1枚に
今日は、次にケアマネジャーと話すときに聞くことを、メモに1行だけ書いておいてください。「災害でデイが休みになったら、どこから連絡が来ますか」。費用はかかりません。その一つの答えが、家族だけで過ごす数日の心強い支えになります。


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