足が弱く杖で歩く義母や親と暮らしていると、地震や豪雨のたびに「もし薬が切れたらどうしよう」と気がかりになりませんか。毎日の血圧の薬、糖尿病の薬、心臓の薬は、数日止まるだけで体調が大きく崩れます。それなのに手元にあるのは、次の受診までのぶんだけ。災害では病院も薬局も混み合い、いつもの薬がすぐ手に入るとは限りません。この記事では、高齢の親の薬を防災の視点でどう備えるかを、常備薬の予備の増やし方、お薬手帳の残し方、災害時に薬を受け取る方法まで、順を追って整理します。難しい準備は出てきません。今日できることから一つずつ進めていきましょう。
- 手元に予備がない
- 種類が多くて把握できない
- お薬手帳が1冊しかない
- 冷蔵庫の薬の扱いが不安
- 災害時のもらい方を知らない

義母の薬は種類が多くて、災害のとき私がちゃんと管理できるか自信がありません。

全部を覚える必要はありません。写真とお薬手帳のコピーがあれば、代わりに情報が説明してくれます。
薬の備えは、量を増やすことよりも「情報を残すこと」が中心になります。予備の薬を少し確保し、飲んでいる中身が誰にでも分かる状態にしておく。この2つができていれば、避難先でも医師や薬剤師が同じ薬を用意できます。読み終えるころには、今日やること・次の受診で頼むこと・家に置いておくものが、はっきり分かれているはずです。
高齢の親の薬の備えが難しい理由

備え方の前に、なぜ薬の備えは後回しになりやすいのかを知っておくと、準備の手が止まりにくくなります。高齢の親の薬は、健康な人の常備薬とは事情が違います。飲み忘れると命に関わる薬が、複数まざっているからです。しかも本人は種類や量を正確に言えないことが多く、いざというときは家族が代わりに説明しなければなりません。ここでは、多くの家庭が同じところでつまずく3つの理由を見ていきます。
処方は次の受診分しか手元にない
病院で出される薬は、基本的に次の診察日までのぶんだけです。1か月ごとの通院なら、手元には多くても1か月分、受診直前なら数日分しかありません。
これは制度上のしくみで、患者側が悪いわけではありません。ただ防災の面では弱点になります。受診の3日前に地震が起きれば、手元の薬は3日で尽きます。災害後は道路や公共交通が乱れ、いつもの病院にたどり着くまで1週間かかることもあるのです。

だからこそ、ふだんの処方とは別に「防災用の予備」を少しだけ確保しておく発想が必要になります。その具体的な増やし方は、次の章でお伝えします。
薬の種類が多く家族が把握しきれない
高齢の親は、3種類以上の薬を毎日飲んでいることが珍しくありません。血圧、コレステロール、血液をさらさらにする薬、胃薬、睡眠の薬と重なっていきます。
同居していても、いつ何を飲んでいるかを正確に把握している家族は多くありません。本人も「白い小さいの」としか説明できないことがあります。避難所の救護所で「何を飲んでいますか」と聞かれて答えられないと、代わりの薬を出してもらうのに時間がかかります。
覚えようとする必要はありません。薬の一覧を写真とお薬手帳のコピーで残しておけば、その紙が代わりに答えてくれます。
冷蔵保存やインスリンなど扱いに不安がある
インスリンや一部の目薬、注射薬は冷蔵庫での保存が必要で、停電に弱いという不安があります。持ち出し袋に入れっぱなしにもできません。
ただ、これらの薬は数時間から数日の常温なら効果が大きくは落ちないものも多く、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。大切なのは、かかりつけの医師や薬剤師に「災害で冷蔵できないときどうするか」を一度聞いておくことです。
- インスリンなどの注射薬
- 一部の目薬や坐薬
- 粉薬や一包化した薬
- 飲む時間が決まった薬
不安な薬があるほど、事前にかかりつけへ相談する価値があります。次の章で、相談の切り出し方もあわせて紹介します。
高齢の親の薬を防災で備える方法

ここが記事の中心です。高齢の親の薬の備えは、「常備薬の予備」「お薬手帳の控え」「服薬用の水」の3点にしぼれます。あれもこれもと考えず、この3つをそろえることから始めてください。予備の薬は多ければよいわけではなく、期限切れを防ぐために回しながら使う量にとどめます。ここでは、それぞれをどう用意するかを具体的に見ていきましょう。
常備薬の予備を1週間分そろえる
目標は、ふだんの薬とは別に、予備を3日〜1週間分持っておくことです。上限は2週間分までとし、それ以上は増やしません。
予備は次の受診のときに医師へ相談すると確保できます。「災害のときに薬が切れるのが不安なので、少し早めに出してもらえませんか」と伝えれば、事情を考えて対応してくれることが多いです。受け取った予備は持ち出し袋か、その近くの決めた場所に入れます。

予備を袋に入れたら、ふだんの薬を新しく受け取ったタイミングで、袋の中身と入れ替えます。こうすると常に新しい薬が予備として回り、期限切れを防げるでしょう。
お薬手帳のコピーと薬の写真を用意する
予備の薬と同じくらい大切なのが、飲んでいる薬が分かる記録を、複数の場所に残しておくことです。お薬手帳のコピー、または薬局でもらえる「薬剤情報提供書」のコピーを使います。
コピーは、持ち出し袋・本人の財布・介助する家族の財布の3か所に分けて入れます。あわせて、薬をシートごと並べてスマートフォンで写真を撮り、家族数人のスマホに保存しておきます。紙が濡れても、電池が切れても、どこかに情報が残る状態を作るのが目的です。
- 持ち出し袋にコピー1部
- 本人の財布にコピー1部
- 家族の財布にコピー1部
- 家族のスマホに薬の写真
この5分の作業が、避難先で「同じ薬をください」と言えるかどうかを分けます。今日のうちに写真だけでも撮っておいてください。
薬を飲むための水と道具をまとめる
見落としがちですが、薬を飲むには水がいります。断水すると、飲み水はあっても服薬用にまで気が回らないことがあります。
持ち出し袋には、500ミリリットルのペットボトルを1〜2本、服薬用として別に入れておきます。粉薬を飲むオブラート、錠剤を小分けにするピルケース、1週間分の曜日つきの薬ケースもあると、避難先で飲み間違いを防げます。老眼鏡がないと薬の説明が読めない方は、予備の老眼鏡も一緒に入れましょう。
- 服薬用の水 … 500ミリ 1〜2本
- 曜日つきの薬ケース
- オブラートやゼリー
- 予備の老眼鏡
どれも軽く、袋の重さをほとんど増やしません。薬と一緒にひとまとめにしておくと安心です。
お薬手帳と持病情報の残し方

お薬手帳は、災害時に最も頼りになる1枚です。ただし原本を持ち出し袋に入れっぱなしにするのはおすすめしません。ふだんの受診で使うため、いざというときに袋に入っていないことが起きるからです。ここでは、原本を受診用に手元に置きながら、防災用の控えをどう作るかを整理します。あわせて、お薬手帳だけでは足りない持病の情報の残し方も紹介します。
原本は受診用、防災用はコピーと写真
お薬手帳の原本は、ふだん持ち歩くカバンや、玄関のいつもの場所に置いておきます。防災用には、その全ページをコピーするか、スマホで撮影したものを使います。
コピーは受診のたびに新しいページを足して更新します。3か月に1度でも十分です。写真は、新しい薬が増えたときに撮り直します。原本と控えの二重管理にすることで、どちらか一方を失っても情報は守られます。

アプリのお薬手帳を使っている場合も、圏外や電池切れに備えて、紙のコピーを1部は持っておくと安心できます。
持病・かかりつけ・アレルギーのメモを作る
お薬手帳には薬は載っていても、持病の正式な病名や、かかりつけ医の連絡先までは書かれていません。これらは別に1枚のメモにまとめます。
書く内容は、病名、かかりつけの病院名と電話番号、アレルギーの有無、透析や在宅酸素などの医療的ケアの有無です。本人が説明できなくても、このメモを見せれば救護所で状況が伝わります。手書きで構いません。
- 病名と診断された時期
- かかりつけ病院と電話番号
- アレルギーと過去の副作用
- 医療的ケアの有無
- 本人の血液型
このメモは、お薬手帳のコピーと同じ封筒に入れておくと、一緒に持ち出せて分かりやすいです。
本人が説明できないときに備える工夫
耳が遠かったり、気が動転していたりすると、本人はふだん言えることも言えなくなります。そのための備えをしておきましょう。
ヘルプマークや、持病を書いたカードを本人の首から下げられるようにしておくと、はぐれても情報が伝わります。財布の見えるところに「お薬手帳のコピーは同じ財布の中にあります」と書いた札を入れておくのも有効です。介助する家族が近くにいないときのための保険になります。
こうした工夫は、避難のときだけでなく、ふだんの外出中に体調を崩したときにも役立ちます。
災害で薬が足りなくなったときの対処

備えていても、避難が長引けば予備の薬は尽きます。そのときに知っておきたいのは、災害時は、いつもの処方せんがなくても薬をもらえるしくみがあるということです。過度に不安を抱える必要はありません。ここでは、薬が足りなくなったときに頼れる場所と、その使い方を紹介します。お薬手帳のコピーが、ここでも力を発揮します。
避難所の救護所と災害薬事コーディネーター
大きな災害では、避難所やその近くに医師や薬剤師がいる救護所が設けられます。ここで、飲んでいる薬を伝えれば、同じか近い薬を出してもらえます。
このときお薬手帳のコピーや薬の写真があると、話が早く進みます。「白い薬」ではなく正確な薬名が分かるためです。救護所の場所は、避難所の掲示や自治体の広報、ラジオで案内されます。まずは避難所の運営スタッフに「持病の薬が切れそうです」と伝えてください。
災害時は処方せんなしで薬局が対応できる
災害救助法が適用された地域では、処方せんがなくても、薬剤師の判断で必要な薬を渡せる特例が使われます。開いている薬局を見つけたら、お薬手帳のコピーを見せて相談しましょう。
お薬手帳がまったくない場合でも、薬の名前や色・形、かかっている病院を伝えれば、薬剤師が調べて対応してくれます。あきらめずに、近くの薬局や救護所をあたってください。
- 避難所の運営スタッフ
- 避難所近くの救護所
- 営業している薬局
- かかりつけ病院の災害用電話
お薬手帳があれば話が早い理由
ここまで何度も出てきたお薬手帳ですが、これ1つで「正確な薬名」「量」「飲み方」「処方した病院」がすべて分かります。医療者にとって、これ以上ない情報源です。
逆に、この情報がないと、医療者は本人や家族への聞き取りと、少ない手がかりからの推測で薬を決めることになります。時間がかかり、いつもと違う薬になる可能性も上がります。コピー1枚を財布に入れておくだけで、この差が生まれるのです。
過去の災害でも、お薬手帳を持っていた人ほど、必要な薬を早く受け取れたことが報告されています。今日の準備が、そのまま数日後の安心につながります。
よくある質問

最後に、高齢の親の薬の備えについて寄せられることの多い質問をまとめました。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。うちの場合はどうだろうと置き換えながら読んでみてください。小さな迷いが一つ消えるだけでも、準備は前に進みます。
予備の薬は医師に頼めば必ずもらえますか
必ずとは言えませんが、災害への不安を理由に相談すれば、応じてもらえることが多いです。麻薬性の薬や向精神薬など、日数管理が厳しい薬は難しい場合があります。まずは次の受診で正直に相談してみてください。
市販薬で代わりにできる薬はありますか
血圧や糖尿病、心臓の薬など、毎日飲む処方薬に市販薬の代わりはありません。自己判断で市販薬に置き換えるのは危険です。胃薬や痛み止め、便秘薬など一部は市販薬で当座をしのげるものもあるため、かかりつけに確認しておきましょう。
お薬手帳をなくしてしまいました
薬局に行けば再発行してもらえます。同じ薬局を使っていれば、記録が残っているため過去の内容も反映できます。再発行のあとは、すぐにコピーを取って防災用の控えを作り直してください。
薬を持ち出し袋に入れると期限が心配です
予備の薬を入れ、ふだんの薬を新しく受け取るたびに袋の中身と入れ替える方法にすれば、常に新しい薬が回ります。半年に一度は袋を開けて、薬とお薬手帳コピーの期限や内容を確認しましょう。
インスリンは停電したらどうすればいいですか
使用中のインスリンは、28日程度なら室温の保管でも使えるものが一般的です。未開封分は保冷剤と一緒に持ち出します。詳しい保管の目安は薬によって違うため、かかりつけの医師か薬剤師に、災害時の扱いを事前に確認しておくと安心です。
認知症の親が薬を勝手に飲んでしまわないか不安です
予備の薬は本人の手が届かない場所で管理し、鍵つきの箱や家族が管理する袋に入れます。曜日つきの薬ケースを使い、その日のぶんだけ本人に渡す方法にすると、飲みすぎと飲み忘れの両方を防げます。避難時は家族が薬の管理を引き継ぐ前提で準備してください。
まとめ

高齢の親の薬の備えは、量をたくさん抱え込むことではありません。予備を少しと、飲んでいる薬が誰にでも分かる記録があれば十分です。常備薬の予備を1週間分、お薬手帳のコピーを3か所に、服薬用の水を持ち出し袋に。この3点がそろえば、災害で薬が切れても、救護所や薬局で同じ薬を受け取れます。医師がいなくても薬をもらえるしくみは用意されています。だから、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。
- 予備は3日〜1週間分
- 上限は2週間分まで
- お薬手帳はコピーと写真で
- 控えは3か所に分ける
- 持病メモを1枚作る
- 災害時は処方せんなしでOK
とはいえ、今日すべてを終える必要はありません。まずは親の薬をシートごと並べて、スマートフォンで写真を撮ってください。それを家族のスマホにも送っておく。たったこれだけで、いちばん大事な「飲んでいる薬が分かる記録」が半分できあがります。次の受診のときに「防災用に予備がほしい」と伝えるところまで進めば十分です。今日ひとつ動けば、次に揺れたときの不安は確実に軽くなります。高齢の家族がいる家庭の備えについて、このブログではこれからも具体的な手順をお伝えしていきます。


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