大きな地震のあと、ドラッグストアの棚から真っ先に消えるもののひとつが大人用おむつです。物流が止まれば、いつものサイズがいつ手に入るか分かりません。足の弱い親が家で過ごすことになったら、おむつは何枚あれば足りるのか。そもそも、まだおむつを使っていない親にも用意が必要なのか。そう考えて手が止まってしまう方は少なくありません。大人用おむつの備蓄は「普段の1日の枚数 × 7日分」を目安に、パッドとパンツを分けて数えれば、必要な量は家庭ごとに決められます。この記事では、数の決め方と一緒にそろえたい物、置き場所、断水中の交換と後始末までを順番にまとめました。
- 何枚あれば足りるのか
- 使っていない親にも必要か
- 押し入れに入りきらない
- 水がないときの交換
- 使用済みの捨て場所

義母は夜だけパッドを使っています。災害のときに何枚くらい買い置きしておけばいいのか、見当がつきません。

分からなくて当然です。必要な枚数は人によってまったく違うので、まず普段の1日に何枚使っているかを数えるところから始めましょう。その数が分かれば、あとは日数を掛けるだけで備蓄の目安が出せますよ。
今日ひとつだけやるなら、明日1日で使ったパッドとパンツの枚数を、メモに書き出してみてください。その数字が、これから決める備蓄量の土台になります。
災害時におむつが足りなくなる理由

大人用おむつは、食料や水に比べて備蓄の話題にのぼりにくい物です。けれども、高齢の家族がいる家では、なくなったときに代わりがききにくい物でもあります。災害のあとは「買えない」「届かない」「急に必要になる」が重なるため、普段より多めに家に置いておくことが大切です。避難所に行かず家で過ごす場合、自分から取りに行かなければ支援物資が手元に届きにくいこともあります。まずは、災害時に大人用おむつが足りなくなる理由を3つ見ていきましょう。
お店の棚から真っ先に消える
災害のあとは、多くの家庭が同じ物を求めてお店に向かいます。大人用おむつはかさばるため、もともとお店に置いてある量が多くありません。道路や工場が止まると入荷の見通しが立たず、数日から1週間以上手に入りにくくなることもあります。いつも使っているサイズや種類が残っているとは限らない点も、覚えておきたいところです。
支援物資はサイズが合わないことも
避難所には大人用おむつが支援物資として届くこともあります。ただ、届くまでに時間がかかることが多く、サイズや種類を選べるとは限りません。合わないおむつは漏れやすく、肌のかぶれの原因にもなるでしょう。在宅避難の家庭が支援物資を受け取る手順は在宅避難で支援物資がもらえない理由と手順で紹介しています。
普段使わない人も急に必要になる
今はおむつを使っていない親でも、災害のあとは必要になる場合があります。断水で水洗トイレが使えない、廊下に物が散らばってトイレまで歩けない、夜が真っ暗で移動が危ないといった状況が重なるためです。普段は使っていなくても、尿取りパッドやパンツ型を少しだけ用意しておくと、もしものときの安心につながります。
- 断水でトイレが流せない
- トイレまでの通路が危ない
- 停電で夜の廊下が暗い
- 緊張で尿が近くなる
- 車や避難先で長く待つ
大人用おむつ備蓄の必要な数

大人用おむつの必要な数は、本人の体の状態や、昼と夜の使い方によって大きく変わります。だからこそ、インターネットで見かけた枚数をそのまま買うより、家族の実際の使い方から計算するほうが確実です。計算は「普段の1日の枚数 × 7日分」に、漏れや体調の変化に備えた予備を少し足すだけです。7日分という目安は、食料や水の備蓄と同じく、支援や流通が戻るまでをしのぐための考え方です。数の決め方を3つの手順で見ていきましょう。
普段の1日の枚数を数える
まずは、ふだんの1日に何枚使っているかを数えます。日中に何回替えているか、夜は何枚使っているかを分けてメモしておくと、あとで計算しやすくなるでしょう。デイサービスや訪問介護で替えてもらっている分も、災害時は家族が替えることになるので、忘れずに足してください。担当のケアマネジャーや事業所に聞けば、1日の交換回数を教えてもらえます。
7日分を目安に予備を足す
1日の枚数が分かったら、7倍して1週間分の量を出します。たとえば尿取りパッドを1日5枚使う方なら35枚、パンツ型を1日2枚使う方なら14枚が目安です。災害のあとは体調を崩して回数が増えることもあるため、計算した量に1〜2日分の予備を足しておくと安心です。最初から全部そろえる必要はなく、普段の買い置きを少しずつ増やしていけば十分です。
パッドとパンツは分けて数える
尿取りパッドは、パンツ型やテープ式のおむつの内側に重ねて使う物です。パッドだけを替えれば済む場面が多いので、パッドの枚数は外側のおむつより多く必要になります。おむつとパッドを「まとめて何枚」と数えると、どちらか一方だけ先に足りなくなることがあるため、種類ごとに分けて数えてください。夜用の大きめのパッドを使っている場合も、昼用と分けて考えます。
| 種類 | 1日の使用例 | 7日分の目安 |
|---|---|---|
| 尿取りパッド(昼用) | 4枚 | 28枚 |
| 尿取りパッド(夜用) | 1枚 | 7枚 |
| パンツ型おむつ | 2枚 | 14枚 |

交換に使う物も一緒に備える

おむつの枚数だけそろえても、交換に使う物が足りなければ困ってしまいます。特に断水していると、ふだんのようにお湯でおしりを洗ったり、汚れた物を洗濯したりすることができません。「拭く物」「手を守る物」「汚れを閉じ込める物」の3つを、おむつのそばにまとめて置いておきましょう。どれも普段の介護で使っている物の延長で、特別な道具は必要ありません。交換のときに一緒に備えたい物を3つ紹介します。
おしり拭きと使い捨て手袋
断水中は、おしり拭きが洗浄の代わりになります。1回の交換で数枚使うことが多いため、おむつの枚数に合わせて多めに用意しておきましょう。使い捨て手袋は、交換する家族の手を守り、感染を広げないためにも欠かせません。手を洗う水が限られるときは、アルコールの手指消毒液もあると便利です。
防水シーツと替えの下着
夜に漏れてしまうと、断水中は布団やシーツをすぐに洗えません。布団の上に防水シーツや使い捨ての吸水シートを敷いておくと、寝具を汚さずに済みます。替えの下着やパジャマも、ふだんより1〜2組多めに用意しておくと安心でしょう。
臭いを閉じ込める袋
災害のあとは、ごみの収集が数日から1週間以上止まることがあります。使用済みのおむつをそのまま置いておくと、臭いが部屋にこもりやすくなるでしょう。防臭袋で1回分ずつ包み、ふたのできるごみ箱やバケツにまとめておくと、臭いをかなり抑えられます。新聞紙で包んでから袋に入れると、水分も吸ってくれます。
- おしり拭き
- 使い捨て手袋
- 防水シーツや吸水シート
- 防臭袋とふた付きの容器
- 替えの下着とパジャマ
おむつの置き場所の決め方

大人用おむつは1袋がかさばるため、1週間分をそろえると押し入れの一角を占めるほどの量になります。全部を1か所にまとめると、その部屋に入れなくなったときに取り出せません。「すぐ使う分は寝る部屋のそば」「残りは家の中で分けて置く」と決めておくと、揺れのあとでも手が届きやすくなります。地震で家具が倒れたり、物が散らばったりして通れない部屋が出ることもあるためです。置き場所を決めるときの考え方を3つ紹介します。
寝る部屋のそばに1日分
夜中に揺れたとき、暗い中で別の部屋まで取りに行くのは危険です。親が寝ている部屋のそばに、1日分のおむつとパッド、おしり拭き、手袋、ライトをひとまとめにした袋を置いておきましょう。この袋は、避難所や車に移るときの持ち出し用にもそのまま使えます。持ち出し袋の中身は足の弱い高齢者の持ち出し袋の中身と減らし方でも紹介しています。
1階と2階に分けて置く
2階建ての家なら、1階と2階に分けて置いておくと、どちらかの部屋に入れなくなっても使えます。足の弱い親は1階で過ごすことが多いので、多めの量を1階に置くとよいでしょう。浸水のおそれがある地域では、床に直接置かず、棚の上段など高い場所にしまってください。
普段の買い置きを回して使う
紙おむつには食品のような期限の表示がないことが多いものの、長く置くと吸水力やテープの粘着力が落ちることがあります。メーカーによっては、製造からおよそ3年を品質の目安としています。古い物から使い、使った分だけ買い足す形にしておけば、いつも新しい物が家にある状態を保てます。この回し方は在宅避難の備蓄 ローリングストックの回し方と同じ考え方です。

断水中のおむつ交換と後始末

断水や停電の中でおむつを替えるのは、ふだんより手間がかかります。お湯が使えない、部屋が暗い、ごみが出せないといった不便が重なるためです。それでも、交換の回数を減らしすぎると、肌のかぶれや床ずれ(同じ場所が圧迫されてできる傷)につながることがあります。枚数を節約するより、いつもと同じくらいの間隔で替え続けることを優先してください。断水中の交換と後始末のポイントを3つ紹介します。
水を使わずに清潔を保つ
お湯で洗えないときは、おしり拭きでやさしく押さえるように拭きます。強くこすると、乾燥した肌が傷つきやすくなるので注意しましょう。ペットボトルのキャップに小さな穴をあけると、少ない水で陰部を流せる簡単な洗浄ボトルになります。体全体を拭く方法は在宅避難の高齢者の清潔と口腔ケアの手順で紹介しています。
かぶれと床ずれに気をつける
交換のときは、おしりや太ももの付け根が赤くなっていないかを見てください。赤みが続く、皮がむけている、痛がるといった様子があれば、早めに受診先や訪問看護に相談しましょう。寝たまま過ごす時間が長い方は、ときどき体の向きを変えて、同じ場所に体重がかかり続けないようにすることが大切です。体の向きを変えるときは、本人が痛みを訴えたら無理をせず、持病がある場合は主治医やケアマネジャーに方法を確認しておいてください。
使用済みはごみの日まで密閉する
使用済みのおむつは、汚れた部分を内側に丸めてから、防臭袋や二重にしたポリ袋に入れて口をしっかり縛ります。ごみの収集が再開するまでは、ふた付きの容器に入れて、ベランダや物置など人が過ごさない場所に置いておきましょう。収集の再開時期や出し方は自治体によって違うので、お住まいの市区町村の案内を確認してください。
- 枚数を惜しんで替えない
- おしりを強くこする
- 使用済みを口を開けたまま置く
- 過ごす部屋に溜めておく
- 水洗トイレに流す
よくある質問

大人用おむつの備蓄について、よく寄せられる疑問をまとめました。おむつの話は親本人が嫌がることも多いので、「災害のときだけの念のため」と伝えると話しやすくなります。体の状態や使う種類は人によって違うため、迷ったときは担当のケアマネジャーや、ふだん利用している介護事業所に相談してみてください。おむつの種類や当て方のこつを教えてもらえることもあります。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
おむつを使っていない親にも必要ですか
今は使っていなくても、パンツ型おむつか尿取りパッドを数日分だけ用意しておくと安心です。断水や夜の暗さでトイレに行きにくくなったとき、「もしものときの下着」として使えます。本人が抵抗を感じる場合は、薄手の尿漏れパッドから始めると受け入れてもらいやすいでしょう。
使用期限はありますか
紙おむつには、食品のような期限の表示がないことが多いです。ただ、長く置くと吸水力やテープの粘着力が落ちることがあるため、メーカーによっては製造からおよそ3年を品質の目安としています。買い置きは古い物から使い、使った分を買い足す形にしておくと安心です。
体型が変わってサイズが合わなくなったら
体重の増減や体の状態の変化で、合うサイズは変わります。年に1〜2回、防災の日や季節の変わり目に、備蓄しているおむつのサイズが今の体に合っているかを確かめてください。合わなくなった物は、普段の交換で先に使い切ってしまいましょう。
自治体のおむつの支給は使えますか
多くの市区町村で、介護が必要な高齢者に紙おむつを支給したり、購入費を助成したりする制度があります。ただし、対象となる人や支給の量、申し込み方は自治体によって大きく違います。お住まいの市区町村の高齢福祉の担当課か、担当のケアマネジャーに確認してみてください。
携帯トイレとどちらを優先すべきですか
トイレまで歩ける方には携帯トイレ、歩くのが難しい方や夜に間に合わない方にはおむつやパッドが向いています。多くの家庭では、両方を少しずつ備えておくのが現実的です。携帯トイレの必要な数は在宅避難のトイレ 高齢者に必要な携帯トイレの数を参考にしてください。
まとめ

災害のあとは、大人用おむつが「買えない」「届かない」「急に必要になる」が重なります。それでも、普段の1日の枚数を数えて7日分と予備をそろえ、交換に使う物と一緒に置き場所を分けておけば、家で過ごす数日をしのぐ準備はできます。数は人によって違うので、まずは家族の1日の枚数を知ることが、いちばん確かな第一歩です。
- 1日の枚数 × 7日分+予備
- パッドとパンツは分けて数える
- おしり拭きと手袋も一緒に
- 寝る部屋のそばに1日分
- 古い物から使って回す
- 使用済みは密閉して保管
今日は、親が1日に使っているパッドとパンツの枚数をメモしてみてください。次に、その7日分が家にあるかを数えると、足りない量がはっきりします。トイレに歩ける日のために、簡易トイレも一緒に備えておくと、おむつだけに頼らずに済むでしょう。


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