足が弱く杖で歩く義母や親と暮らしていると、地震や豪雨で断水したとき「トイレをどうしよう」と不安になりませんか。水道が止まると、自宅のトイレは1回か2回で流せなくなります。若い人なら数時間は我慢もできますが、高齢の家族はそうはいきません。トイレを我慢すると水分をとるのを控えるようになり、脱水や便秘、エコノミークラス症候群につながります。在宅避難では、食料や水よりも先にトイレの備えを考えたほうがよい場面もあります。この記事では、高齢者がいる家庭に必要な携帯トイレの数と選び方を、1日の使用回数の考え方から、夜間や介助のしやすさまで、順を追って整理します。今日、押し入れの容量を1つ空けるところから始めましょう。
- 何回分そろえればいいか分からない
- 断水で自宅のトイレが使えない
- 高齢者が洋式でないと座れない
- 夜中の移動でつまずく
- 使用後のにおいと保管

義母は足が悪くて和式では用を足せません。断水したら、どこでどうすればいいのか想像がつかなくて。

いつもの洋式便器に袋をかぶせて使う携帯トイレなら、座る場所は今までどおりです。数だけ先に決めてしまいましょう。
在宅避難のトイレ対策は、特別な道具を買いそろえることではありません。いつもの洋式便器にかぶせて使う携帯トイレを、必要な回数分そろえるだけです。読み終えるころには、うちには何回分必要か、どれを選べばいいか、どこに置くかが、はっきり分かれているはずです。
在宅避難で高齢者のトイレが問題になる理由

数と選び方の前に、なぜ高齢者のいる家庭ほどトイレの備えが大切なのかを知っておくと、準備の手が止まりにくくなります。高齢の家族は、トイレを我慢することそのものが健康を損なう原因になります。若い人なら「少しくらい我慢する」で済むことが、高齢者では脱水や体調悪化に直結します。ここでは、多くの家庭が見落としている3つの理由を見ていきます。
断水すると自宅の便器はすぐ使えなくなる
水道が止まっても、タンクに残った水で流せるのは最初の1〜2回だけです。そのあとバケツの水で流そうとする方もいますが、地震のあとは排水管が壊れていることがあり、汚水が下の階や床下にあふれる事故が起きています。
マンションでも戸建てでも、地震後は「配管の安全が確認できるまで水を流さない」が基本です。つまり断水した時点で、家族全員が携帯トイレに切り替える前提になります。
トイレを我慢すると高齢者は体調を崩す
トイレが不便だと、人は自然に水分をとるのを控えます。高齢者はもともと体内の水分量が少なく、のどの渇きも感じにくいため、少し控えただけで脱水に傾きます。
脱水は、めまいや立ちくらみによる転倒、血液が固まりやすくなることでのエコノミークラス症候群、便秘や膀胱炎につながります。過去の災害でも、トイレを我慢したことが引き金になった高齢者の体調不良が数多く報告されています。
- 水分を控えて脱水
- 立ちくらみで転倒
- エコノミークラス症候群
- 便秘と膀胱炎
和式や介助が必要だと避難所では対応しにくい
避難所のトイレは和式だったり、屋外の仮設で段差があったりします。杖歩行の家族には使いにくく、夜間は特に危険です。使い慣れた自宅の洋式便器を使い続けられることが、在宅避難の大きな利点です。
だからこそ、その便器を停電・断水でも使えるようにしておく携帯トイレの備えが、高齢者のいる家庭では優先度の高い準備になります。次の章で、必要な数の決め方を見ていきましょう。
高齢者に必要な携帯トイレの数

ここが記事の中心です。必要な数は、1人1日5回を目安に、家族の人数と備える日数をかけ算して求めます。国は最低3日分、できれば1週間分の備蓄をすすめています。難しい計算はありません。うちの人数を当てはめるだけで、そろえるべき枚数が出ます。ここでは、その考え方と、高齢者がいる場合の上乗せを説明します。
1人1日5回を基本に人数と日数でかける
トイレの回数には個人差がありますが、備蓄の計算では1人あたり1日5回で見ておくと不足しにくいとされています。これに家族の人数と日数をかけます。
たとえば4人家族で1週間分なら、5回 × 4人 × 7日 = 140回分です。3日分なら60回分になります。まず3日分をすぐにそろえ、余裕ができたら1週間分まで増やす順番がおすすめです。

高齢者や在宅介護があるなら1〜2回上乗せする
頻尿の薬を飲んでいたり、夜間に何度も起きたりする高齢の家族がいる場合は、その人だけ1日6〜7回で計算します。おむつを併用していても、交換や処理で袋を使うため、枚数の余裕は必要です。
持病で水分制限や利尿剤がある方、下痢を起こしやすい方も多めに見ておきます。多すぎて困ることはなく、使わなければ次の災害まで保管できます。
- 頻尿や夜間頻尿がある
- 利尿剤を飲んでいる
- おむつを併用している
- 下痢を起こしやすい
凝固剤と処理袋はセット数で足りるか確認する
携帯トイレは、便器にかぶせる袋・排せつ物を固める凝固剤・においを閉じる処理袋の3点がそろって1回分です。「50回分」と書いてあっても、処理袋が同じ数入っているとは限りません。
買う前に、1回分に何が含まれるかを確認してください。処理袋が足りない場合は、中身の見えない厚手のごみ袋を別に用意します。防臭タイプのポリ袋があると、保管中のにおいがぐっと減ります。
- 便器にかぶせる袋
- 排せつ物を固める凝固剤
- においを閉じる処理袋
- 予備の防臭ポリ袋
数の計算ができたら、次は高齢の家族が使いやすいものをどう選ぶかです。
高齢者向けの携帯トイレの選び方

携帯トイレはたくさんの種類がありますが、高齢者のいる家庭で見るべき点はしぼれます。凝固の速さ、においの抑え方、保管期限の3つで選べば失敗しません。デザインや値段の安さより、いざというときに家族が戸惑わず使えるかを優先してください。ここでは、それぞれのポイントと確認のしかたを説明します。
凝固が速くにおいを抑えるタイプを選ぶ
凝固剤は、かけてから固まるまでの時間に差があります。1分以内に固まるものだと、後始末で慌てずにすみます。高齢の家族の介助をしながらだと、この差は大きく感じられます。
抗菌や消臭の成分が入ったものを選ぶと、狭い室内でもにおいがこもりにくくなります。使用後の袋の口をしっかり結べる構造かどうかも、あわせて見ておきましょう。
保管期限が10年以上のものを選ぶ
凝固剤には使用期限があり、短いものだと3〜5年です。10年以上もつタイプを選べば、買い替えの手間と入れ替え忘れを減らせます。
期限の短いものを買った場合は、購入した月をマジックで箱に大きく書いておきます。防災用品をまとめて点検する日を年に1回決めておくと、期限切れに気づけます。

箱のまま押し入れに積める形を選ぶ
備蓄は続けられる形にすることが大切です。四角い箱で積み重ねられるものは、押し入れやクローゼットの隅に置いておけます。袋がばらばらに入った大袋タイプは、かさばって置き場所に困りがちです。
トイレの近く、寝室、玄関の3か所に分けて置いておくと、停電で暗くても手の届く場所から使えます。高齢の家族の寝室には、少し多めに置いておくと安心です。
高齢者が使いやすいトイレ環境の作り方

携帯トイレをそろえたら、それを高齢の家族が安全に使える環境も整えておきます。暗さ、寒さ、立ち座りの3つに手を打っておくと、夜間の転倒を防げます。停電した夜のトイレは、健康な人でも危ないものです。ここでは、費用をかけずにできる工夫を紹介します。
足元灯と手すりで夜間の移動を安全にする
停電すると、廊下もトイレも真っ暗になります。電池式の足元灯を廊下とトイレに置いておくだけで、転倒の危険は大きく下がります。人感センサー付きのものだと、スイッチを探さずにすみます。
便器の横に置いて使う据え置き型の手すりがあると、立ち座りが楽になります。工事のいらないタイプなら、賃貸でも設置できます。介護保険で借りられる場合もあるため、ケアマネジャーに相談してみてください。
- 電池式の足元灯
- 据え置き型の手すり
- 使い捨ての手袋
- おしり拭きと消毒液
- 防臭ポリ袋とふた付きバケツ
ポータブルトイレを寝室に置く選択肢もある
トイレまでの移動そのものが大変な場合は、寝室に置けるポータブルトイレを用意する方法があります。ふだんは使わなくても、災害時や体調不良のときに役立ちます。
ポータブルトイレにも携帯トイレの袋と凝固剤をセットして使えば、水がなくても後始末が簡単です。介護保険の対象品目なので、購入費の補助が受けられることがあります。
使用後のにおいと保管のルールを決めておく
固めた排せつ物の袋は、可燃ごみとして出せますが、災害時は収集が止まるため、数日から数週間ためておくことになります。
ふた付きのバケツやペール缶を「ためる場所」と決め、ベランダや玄関外など直射日光の当たらない場所に置きます。二重に袋で包み、防臭袋を使えば、においはかなり抑えられます。置き場所は家族で先に決めておきましょう。

よくある質問

最後に、高齢者がいる家庭の在宅避難トイレについて、寄せられることの多い質問をまとめました。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。うちの場合はどうだろうと置き換えながら読んでみてください。小さな迷いが一つ消えるだけでも、準備は前に進みます。
ごみ袋と新聞紙で代用できますか
短期間ならできますが、においと衛生の面でおすすめしません。新聞紙は水分を十分に吸わず、袋の中で漏れることがあります。凝固剤入りの携帯トイレのほうが、高齢の家族の負担も介助の手間も少なくなります。どうしても足りないときの一時しのぎと考えてください。
何日分そろえれば安心ですか
まず3日分、余裕ができたら1週間分が目安です。マンションの高層階や、断水が長引きやすい地域では、2週間分まで見ておくと安心できます。一度にそろえなくても、月に1箱ずつ足していく方法で構いません。
凝固剤の期限が切れたら使えませんか
期限が切れると固まる力が弱くなりますが、すぐに使えなくなるわけではありません。固まりにくいと感じたら、ごみ袋にペットシートや紙おむつを敷いて吸わせる方法で補えます。期限内の買い替えが理想ですが、切れていても捨てずに残しておきましょう。
マンションでも携帯トイレは必要ですか
必要です。むしろマンションのほうが重要になります。停電すると水を上の階へ送るポンプが止まり、断水と同じ状態になります。排水管の点検が終わるまで流せないため、戸建てより長く携帯トイレに頼ることになります。
認知症の家族が携帯トイレを使えるか不安です
ふだんの便器にかぶせるタイプなら、座る場所も姿勢も変わらないため、比較的受け入れてもらいやすいです。袋や凝固剤の準備と後始末は家族が担う前提にします。貼り紙で「ここに座ってください」と示しておくと、迷いが減ります。
においが心配で家の中に置けません
未使用の携帯トイレは無臭です。においが出るのは使用後の袋なので、防臭袋で二重に包み、ふた付き容器にためれば室内でも気になりにくくなります。ためる容器を屋外に置ければ、さらに安心です。
まとめ

在宅避難のトイレ対策は、高齢の家族がいる家庭ほど優先度が上がります。いつもの洋式便器にかぶせる携帯トイレを、1人1日5回で計算した数だけそろえるのが基本です。4人家族なら3日分で60回、1週間分で140回。凝固が速くにおいを抑え、10年以上もつタイプを、箱ごと積める形で選びます。足元灯と手すりで夜間の移動を安全にし、使用後の袋をためる場所を家族で決めておく。ここまでできれば、断水しても慌てずにすみます。
- 1人1日5回で計算
- まず3日分、次に1週間分
- 高齢者は1〜2回上乗せ
- 凝固の速さとにおい対策で選ぶ
- 保管期限は10年以上
- 足元灯と手すりで夜を安全に
とはいえ、今日すべてを終える必要はありません。まずは押し入れかクローゼットに、携帯トイレ1箱ぶんの置き場所を空けてください。そして家族の人数 × 5回 × 3日を計算して、必要な数をメモしておく。次の買い物のときに、その3日分を注文すれば十分です。トイレの備えは、食料よりも人に頼りにくく、あとから用意しにくい準備です。今日ひとつ動けば、次に断水したときの不安は確実に軽くなります。高齢の家族がいる家庭の備えについて、このブログではこれからも具体的な手順をお伝えしていきます。


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