減塩を言われている義母に、市販の非常食をそのまま食べさせて大丈夫なのか。そう考えて、防災の備蓄に手が止まっていないでしょうか。非常食の売り場には「食事制限がある人向け」の案内がほとんどなく、何を選べばいいのか分からなくなるのは当然です。それはあなたの知識不足ではありません。食事制限と災害を一緒に考える情報が、そもそも少ないのです。食事制限がある家族の備蓄は、特別な非常食を探すより、いつもの制限の中で食べている物を少し多めに備えることから始められます。この記事では、減塩・たんぱく質や糖の制限・食物アレルギーがある高齢の家族のための、非常食の選び方と相談の仕方を紹介します。
- 非常食の塩分が気になる
- 腎臓病の制限に合う物が分からない
- 糖尿病で主食の量が心配
- アレルギーで支援物資が不安
- 誰に相談すればいいか迷う

義母は塩分を控えるように言われています。非常食のカップ麺や缶詰はしょっぱい物ばかりで、どう備えればいいのか分からなくて。

迷うのは、ちゃんと義母さんの体を考えているからですね。全部を専用の食品にしなくて大丈夫です。いつも食べている物を土台に、足りない部分だけ補えば、制限を守りながら備えられますよ。
今日ひとつだけやるなら、家族の食事制限の内容を、紙に1枚書き出してみてください。何をどれだけ控えているかが分かれば、備蓄の選び方は自然と決まってきます。
高齢者の食事制限と防災備蓄の基本

災害のときは、ふだんの食事のように塩分や量を細かく調整するのが難しくなります。支援物資で届くのは、おにぎりやパン、カップ麺など、誰でも食べられることを前提にした物が中心です。食事制限がある家族にとっては、配られた物をそのまま食べると制限を超えてしまうこともあります。だからこそ、制限に合う物を家に備えておくことが、在宅避難では体を守る大きな支えになります。最初に押さえておきたい基本を3つ紹介します。

非常食は味が濃くなりがち
非常食や保存のきく加工食品は、長く保存するためや、少量でも満足感を出すために、味付けが濃いめの物が少なくありません。カップ麺のスープ、味付きの缶詰、レトルトのおかずなどは、1食で塩分がかなり多くなることもあります。非常食だから体に優しいとは限らないので、成分表示を見てから選ぶ習慣をつけておくと安心です。一方で、白米やおかゆ、水煮の缶詰のように、味付けのない物もあります。こうした物を選べば、家族の制限に合わせて調整しやすくなります。
制限の内容を書き出す
まず、家族がどんな食事制限を受けているかを、紙に書き出しておきます。「塩分を控える」「たんぱく質を控える」「果物は少なめに」「卵が食べられない」など、医師や管理栄養士から言われている内容をそのまま書けば十分です。書き出したメモは、お薬手帳と一緒に保管しておくと、災害時に家族や支援者へ伝えるときにも役に立ちます。自分が家にいないときに、ほかの家族が備蓄を選ぶ手がかりにもなります。お薬手帳の備え方は高齢の親の防災の備えと常備薬の持ち出し方で紹介しました。
災害時のことを主治医に聞く
次の受診のときに、「災害で食事が思うようにとれないとき、何に気をつければいいですか」と主治医に聞いてみてください。ふだんの制限をどこまで守るべきか、食べられないときはどうするかは、病気や状態によって大きく違います。自己判断で制限をゆるめたり厳しくしたりせず、災害時の考え方を前もって聞いておくことが一番の備えです。管理栄養士の栄養相談を受けられる病院もあるので、あわせて相談するとより具体的な助言をもらえるでしょう。
- 食事制限の内容を書いたメモ
- お薬手帳の写し
- 味付けのない主食
- 主治医に聞いた災害時の注意
減塩が必要な家族の備え

高血圧や心臓の病気などで、塩分を控えるように言われている高齢の方は多くいます。災害時は、配られる食事や手軽な保存食で塩分が多くなりやすい一方、水も限られるため、体への負担が気になるところです。とはいえ、減塩の備蓄は難しいものではありません。味付けのない主食を中心にし、塩分の多い物は「使い方」で減らすと、無理なく制限に近づけられます。減塩の備え方を3つ紹介します。
味のない主食を土台にする
白米のレトルトごはんやアルファ米の白飯、味付けのない白がゆは、塩分をほとんど含みません。こうした主食を備蓄の土台にすると、おかずで塩分を調整しやすくなります。主食を味付きの物にしないことが、減塩の備蓄でいちばん効果の大きい工夫です。五目ごはんやわかめごはんなど味付きのアルファ米はおいしいのですが、塩分がある程度含まれています。家族で楽しむ分と、制限のある家族の分を分けて備えておくとよいでしょう。
汁や味付けは使い方で減らす
カップ麺やインスタントのみそ汁は、スープや汁を残すだけで、とる塩分を減らせます。味付きの缶詰も、汁を切ってから食べたり、白がゆに少しのせて味付けに使ったりすると、量を抑えられます。「食べない」より「減らして食べる」を覚えておくと、配られた物も無駄にせずに済みます。減塩しょうゆや減塩のみそ汁など、ふだん使っている減塩の調味料や食品があれば、それも少し多めに備えておきましょう。
成分表示の食塩相当量を見る
加工食品のパッケージには、栄養成分表示として「食塩相当量」が書かれています。ここを見れば、その食品にどれくらい塩分が含まれているかが分かります。備蓄を選ぶときは、似た食品を2つ並べて食塩相当量を比べ、少ないほうを選ぶだけでも違いが出ます。1日にどれくらいまでとってよいかは人によって違うため、目安は主治医や管理栄養士に確認してください。数字を覚えておく必要はなく、比べて少ない物を選ぶ、という考え方で十分です。
- 白米のレトルトごはん
- 味付けのない白がゆ
- 魚や豆の水煮缶
- ふだん使う減塩の調味料
たんぱく質や糖の制限の備え

腎臓の病気でたんぱく質やカリウムを控えている方、糖尿病で主食の量やエネルギーを調整している方は、災害時の食事でとくに迷いやすいものです。制限の内容が細かく、ふだんから病院で指導を受けていることも多いでしょう。こうした制限は病気の状態によって大きく違うため、記事の情報より、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。ここでは、相談するときに役立つ考え方を3つ紹介します。

腎臓病の制限と非常食
腎臓の病気で食事制限がある場合、たんぱく質や塩分に加えて、カリウムや水分の量にも気をつけるよう言われていることがあります。果物の缶詰や野菜ジュース、ドライフルーツは、手軽な非常食ですが、カリウムが多い物もあります。どの食品を控えるべきかは、ふだん受けている指導の内容によるので、備蓄に入れる前に主治医や管理栄養士に確認しましょう。透析を受けている方は、災害時の通院先や連絡方法も、あわせて病院に確かめておくと安心です。
糖尿病と食事の量
糖尿病で治療を受けている方は、災害時に食事の時間や量が不規則になると、血糖の管理が難しくなることがあります。薬の種類によっては、食事がとれないときの飲み方を変える必要がある場合もあります。食べられないときに薬をどうするか、低血糖のときに何を口にすればよいかは、必ず前もって主治医に聞いておいてください。そのうえで、言われた物(ブドウ糖など)を持ち出し袋や備蓄に入れておきます。主食は、量が分かりやすい1食分ずつのパックにしておくと、ふだんの量を守りやすくなります。
治療用の食品は多めに回す
低たんぱくのごはんや、エネルギーを補う栄養補助食品など、治療用の特殊な食品を使っている家もあるでしょう。こうした食品は、災害時に支援物資として届くことはあまり期待できず、お店でも手に入りにくくなります。ふだん使っている治療用の食品は、いつもより数日分多く持ち、食べながら買い足していく形で備えておきましょう。食べながら回す方法は在宅避難の備蓄 ローリングストックの回し方で詳しく紹介しました。
- 食べられない日の薬の飲み方
- 低血糖のときに口にする物
- 控えるべき非常食の種類
- 水分をどれだけとってよいか
- 災害時の受診先と連絡方法
食物アレルギーがある家族の備え

食物アレルギーは子どものものと思われがちですが、大人や高齢者にもあります。災害時の炊き出しや支援物資は、材料が細かく分からないことも多く、アレルギーのある家族には食べられる物が限られてしまいます。アレルギーがある家族にとって、家の備蓄は「確実に食べられる物」を確保するための、何より大切な備えです。アレルギーがある家族の備え方を3つ紹介します。
支援物資は選べないことがある
避難所や在宅避難者に配られる食事は、多くの人に一度に届けることが優先されます。原材料の表示がない物や、炊き出しのように材料が分からない物が配られることもあるでしょう。配られた物で食べられる物がない日も起こりうると考え、家族が安心して食べられる物を最低3日分は家に備えておきましょう。アレルギーに配慮した非常食も市販されているので、ふだんから一度食べて、口に合うかを確かめておくと安心です。支援物資の受け取り方は在宅避難で支援物資がもらえない理由と手順にまとめています。
原材料の表示を確かめる
包装された加工食品には、卵・乳・小麦・えび・かに・そば・落花生・くるみなど、アレルギーの原因になりやすい原材料の表示が法律で義務づけられています。備蓄を選ぶときは、この表示を確かめ、家族のアレルギーの原因になる物が入っていないかを見ます。同じ商品名でも、味の種類や作られた時期で原材料が変わることがあるので、買い足すたびに表示を確かめる習慣をつけましょう。表示が義務でない原材料もあるため、心配なときは主治医に相談してください。
アレルギーを周りに伝える工夫
災害時は、家族以外の人が食事を用意してくれることもあります。そのときにアレルギーを正しく伝えられるよう、原因になる食品と、症状が出たときの対応を書いたカードを作っておきましょう。カードはお薬手帳や持ち出し袋に入れておき、本人が説明できないときでも周りの人が分かるようにしておくと安心です。自治体によっては、アレルギーがあることを示すビブスやカードを用意しているところもあるので、お住まいの市区町村の防災担当課で確認してみてください。
- 表示を見ずに支援物資を食べる
- 一度も食べたことがない非常食だけ
- 原因食品を家族しか知らない
- 買い足しのとき表示を見ない
よくある質問

食事制限がある高齢の家族の備蓄について、よく寄せられる疑問をまとめました。ここで紹介するのは考え方の目安で、制限の内容は一人ひとり違うため、最終的にはかかりつけ医や管理栄養士の指示に従ってください。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。相談先が分からないときは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに聞いてみるのもひとつの方法です。
制限がある人向けの非常食はありますか
アレルギーの原因になりやすい原材料を使っていない非常食や、塩分をひかえた保存食、介護用のやわらかい食品などは市販されています。ただし、すべての制限に合う万能な非常食はありません。成分表示を見て、家族の制限に合う物を選びましょう。
災害時は制限を気にしなくていいですか
食べられる物が少ないときは、まず食べることを優先する場面もあります。ただ、どこまで制限をゆるめてよいかは病気によって違い、自己判断は危険な場合もあります。災害時の考え方を前もって主治医に聞いておくと、そのときに迷わずに済みます。
家族全員の分を別々に用意するべきですか
すべてを分ける必要はありません。白米や白がゆ、水煮の缶詰のように、制限のある人もない人も食べられる物を共通の土台にし、制限のある家族の分だけ専用の物を少し足すと、管理が楽になります。
飲み込む力も弱いときはどうしますか
食事制限に加えて、噛む力や飲み込む力が弱っている場合は、やわらかさにも気を配る必要があります。おかゆやとろみのある食品などを選び、食べやすさの選び方は高齢者がいる家庭の在宅避難 食料備蓄の選び方も参考にしてください。
水の量にも制限がある場合は
心臓や腎臓の病気などで、水分の量を制限されている方もいます。その場合、一般的な目安どおりに水を飲むとよくないこともあるため、災害時にどれくらい飲んでよいかを主治医に確かめておきましょう。家庭の水の備え方は高齢者がいる家庭の水の備えで紹介しました。
まとめ

食事制限がある高齢の家族の備蓄は、特別な非常食をそろえることより、ふだんの制限の中で食べている物を少し多めに備えることが基本です。制限の内容を書き出し、災害時の考え方を主治医に聞いておけば、それに合う備蓄は自然と選べるようになります。全部を一度にそろえようとせず、主食の土台から始めていきましょう。
- 制限の内容を紙に書き出す
- 災害時のことを主治医に聞く
- 味付けのない主食を土台に
- 汁を残して塩分を減らす
- 治療用の食品は多めに回す
- アレルギーはカードで伝える
今日は、家族の食事制限の内容を紙に1枚書き出すところから始めてください。そのうえで、制限のある人もない人も食べられる味付けのない主食を、少しずつ備えておくと安心です。


コメント