防災のために非常食をまとめて買ったのに、気がついたら押し入れの奥で賞味期限が切れていた。そんな経験はないでしょうか。せっかく備えたのに捨てることになると、がっかりして、次に買いそろえる気持ちもしぼんでしまいます。けれど、それはあなたが怠けていたからではありません。「特別な日のための物」として普段の暮らしから切り離してしまうと、誰でも忘れてしまうものです。在宅避難の備蓄は、ふだん食べている物を少し多めに買い、食べたら買い足す「ローリングストック」にすると、切らさずに続けられます。この記事では、高齢の家族がいる家での回し方と、置き場所、買い足しを忘れない仕組みを紹介します。
- 気づくと期限が切れている
- どこにしまったか忘れる
- 非常食の味に家族がなじまない
- 何をどれだけ買うか分からない
- まとめ買いの出費が重い

去年そろえた非常食、さっき見たら半分くらい期限切れでした。義母の分も考えて買ったのに、もったいなくて落ち込んでいます。

捨てるのはつらいですよね。でも、多くの家で同じことが起きています。備え方を「しまっておく」から「食べながら回す」に変えるだけで、無理なく続けられるようになりますよ。
今日ひとつだけやるなら、台所にある缶詰やレトルト食品を、1か所に集めてみてください。すでに家にある物が、そのまま備蓄の出発点になります。
在宅避難のローリングストックとは

ローリングストックは、ふだんの食料を少し多めに買い置きし、古い物から食べて、食べた分を買い足していく備え方です。農林水産省なども、家庭の備蓄の方法として紹介しています。特別な非常食をそろえるのではなく、日常の買い物の延長で備えられるのが特徴です。食べ慣れた物が家に常にある状態をつくることが、在宅避難では何よりの安心につながります。仕組みの考え方を3つに分けて紹介します。

食べながら備える仕組み
ローリングストックの流れは「買う・置く・食べる・買い足す」の繰り返しです。たとえばレトルトのおかゆを4つ買い置きし、1つ食べたら次の買い物で1つ買い足します。こうすると、家には常に一定の量が残り、古い物から順に入れ替わっていきます。期限が来る前に自然と食べ終わるので、捨てる物がほとんど出なくなります。特別な管理表をつくらなくても、毎日の食事の中で回っていくのが、この方法のよいところです。
長期保存食と組み合わせる理由
ふだんの食品だけで回していると、忙しい時期に買い足しが遅れ、家の在庫が少なくなっていることがあります。そこで、5年ほど保存できる長期保存食を少しだけ「土台」として置いておくと安心です。土台は普段の入れ替えには使わず、年に1回くらい期限を確かめます。日常の買い置きで回す分と、動かさない土台の分の2段構えにすると、在庫が減った時期に災害が来ても困りません。
高齢者がいる家で量を決める
備蓄の量は、最低3日分、できれば1週間分が目安とされています。在宅避難では、支援物資が自宅まで届くのに時間がかかることも考えておきたいところです。とはいえ、いきなり1週間分をそろえる必要はありません。まずは家族全員の3日分を目標にし、回せるようになってから少しずつ増やしていけば十分です。水の量の決め方は断水しても慌てない 高齢者がいる家庭の水の備えで紹介しました。
- 日常で回す買い置き
- 動かさない長期保存食
- まず家族の3日分から
- 水も同じ考えで回す
切らさない置き場所と並べ方

ローリングストックが続かない原因の多くは、置き場所にあります。台所の棚、押し入れ、玄関の物入れとあちこちに分かれていると、どこに何があるか分からなくなり、古い物が奥に取り残されてしまいます。置き場所を決めて、古い物が自然と手前に来る並べ方にするだけで、回し方の半分はできあがります。置き場所と並べ方のコツを3つ紹介します。
置き場所は1か所にまとめる
備蓄の食品は、できるだけ1か所にまとめて置きます。台所の近くの棚や、かごを1つ決めるだけでも構いません。「備蓄はここ」と家族全員が分かっていれば、誰が使っても、誰が買い足しても同じ場所に戻ります。家族に声をかけるときは、「このかごの物を食べたら、メモに書いておいて」と、やってほしいことを1つだけ伝えると協力してもらいやすくなります。
手前から使う並べ方
買い足した物は奥に入れ、手前の古い物から使います。お店の陳列と同じ考え方です。缶詰やレトルト食品は、立てて並べると期限の印字が見えやすくなります。箱のまま積み重ねると下の物が見えなくなるので、中身を出して並べるのがおすすめです。ふたのないかごやトレーを使うと、残りの数がひと目で分かり、買い足しの目安にもなります。
手の届く高さに置く
高い棚の上や押し入れの奥は、足腰の弱い家族には取り出せません。踏み台を使うと転倒の心配もあります。備蓄は、腰から胸くらいの高さで、日中家にいる家族が一人で取り出せる場所に置きましょう。地震で棚から落ちてこないよう、重い物は下の段に置くと安心です。日中に高齢の家族と2人で過ごす時間が長い家ほど、この高さの工夫が役に立ちます。
- 台所の近くに1か所
- 腰から胸の高さ
- 中身が見えるかご
- 重い物は下の段
買い足しを忘れない仕組み

ローリングストックで一番つまずきやすいのは、食べたあとの買い足しです。忙しい日が続くと、使ったことを忘れ、気づいたときには在庫が減っていることがあります。気合いで覚えておこうとすると、どうしても続きません。買い足しは「覚えておく」のではなく、いつもの買い物の流れに組み込んでしまうのがコツです。忘れないための仕組みを3つ紹介します。

1つ使ったら1つ買う
ルールは「1つ使ったら1つ買う」だけにします。何個まで減ったら買う、といった細かい決まりをつくると、考えることが増えて続きにくくなるためです。数を数えなくても、使った分だけ戻せば、家の在庫はいつも同じ量に保たれます。食べた物の空き箱や空き袋を、捨てる前に冷蔵庫に貼っておく、という方法をとる家もあります。目に入る場所に「使った印」があると、買い物のときに思い出せます。
買い物メモに組み込む
備蓄の食品を食べたら、その場でいつもの買い物メモに書き足します。紙のメモでも、スマホのメモでも構いません。備蓄用の特別なリストをつくらず、ふだんの買い物リストと一緒にすることで、買い忘れが減ります。家族で共有できるメモアプリを使えば、仕事帰りの夫や子どもに買ってきてもらうこともできるでしょう。家族の協力の得方は防災に協力しない家族の巻き込み方と頼み方も参考にしてください。
日付の確認は月1回
回していても、あまり食べない物は奥に残りがちです。月に1回、たとえば月初めやゴミの日など、決まった日に備蓄のかごを見る習慣をつくりましょう。期限が近い物を見つけたら、その週の献立に入れて食べてしまえば、無駄になりません。土台にしている長期保存食は、年に1回、防災の日や誕生日など覚えやすい日に確かめると忘れにくくなります。
- 体調を崩して買い物に行けない
- 家族が黙って食べてしまう
- 年末年始などの忙しい時期
- 特売でまとめ買いした直後
高齢の家族に合わせた回し方

高齢の家族がいる家では、備蓄の中身にも少し工夫が必要です。災害のときは環境が変わり、ただでさえ食欲が落ちやすくなります。そこへ食べ慣れない物や硬い物ばかりが並ぶと、食事が進まなくなることもあるでしょう。高齢の家族のローリングストックは、ふだん食べている物の中から、噛みやすく飲み込みやすい物を選んで回すのが基本です。気をつけたい点を3つ紹介します。
普段食べ慣れた物を選ぶ
ローリングストックのよいところは、ふだんの食事で食べている物を備蓄にできる点です。義父母が好きな缶詰や、いつも食べているレトルトのおかずがあれば、それをそのまま回します。災害のときに「いつもの味」があるだけで、高齢の家族の気持ちが落ち着き、食事が進みやすくなります。新しい非常食を試すときは、平時に一度食べてもらい、口に合うかを確かめておくと安心です。
やわらかい食品も回す
噛む力や飲み込む力が弱くなっている家族には、おかゆ、やわらかく煮た野菜のレトルト、スープ、ゼリー飲料などを備蓄に加えます。介護用のやわらかい食品も、ふだんから少しずつ使って回すことができます。ふだん介護食を使っていない家でも、体調を崩したときのために、やわらかい物を数日分は回しておくと備えになります。食べやすい食品の選び方は高齢者がいる家庭の在宅避難 食料備蓄の選び方で詳しく紹介しました。
水や日用品も同じ考えで
ローリングストックは食品だけのものではありません。飲み水のペットボトル、トイレットペーパー、大人用のおむつ、口腔ケア用品なども、少し多めに買って使いながら回せます。ふだん使っている日用品を1袋多く持っておくだけで、災害直後の数日をしのぎやすくなります。常備薬は自己判断で多めに持つことができないため、残りの日数や備え方を、かかりつけ医や薬局に相談しておきましょう。薬の備えは高齢の親の防災の備えと常備薬の持ち出し方にまとめています。
- 硬い乾パンだけに頼る
- 一度も食べたことがない物ばかり
- 食事制限を考えずに選ぶ
- 取り出せない場所にしまう
よくある質問

在宅避難のローリングストックについて、よく寄せられる疑問をまとめました。食事制限や持病がある家族の食品選びは、自己判断せず、かかりつけ医や管理栄養士に相談してください。ここでは、続けるうえでの考え方の目安を紹介します。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
何から始めればいいですか
まずは家にある缶詰やレトルト食品を1か所に集め、何がどれだけあるかを見てみましょう。そのうえで、家族がよく食べる物を2つか3つ選び、いつもより1つ多く買うところから始めます。最初から完璧な量をそろえようとしなくて大丈夫です。
冷蔵庫や冷凍庫の食品も入りますか
停電してもしばらくは冷蔵庫や冷凍庫の食品を食べられるため、災害直後の数日の食事として考えることはできます。ただし、停電が長引くと傷みやすくなるので、常温で保存できる物を中心に回し、冷蔵庫の物は早めに食べる順番を意識しておきましょう。
食事制限がある家族はどうしますか
減塩やたんぱく質の制限など、医師から食事の指示を受けている場合は、その範囲で食べられる物を回します。市販の非常食は塩分が多めの物もあるため、成分表示を確かめましょう。迷ったときは、かかりつけ医や管理栄養士、ケアマネジャーに相談すると安心です。
保管場所が足りないときは
無理に広い場所を用意する必要はありません。台所の棚の一段や、かご1つ分からで十分です。ベッドの下や階段下など、すき間を使う方法もありますが、高齢の家族が取り出せるかどうかも一緒に考えて決めましょう。
ペットの食事も回せますか
ペットフードも、ふだん食べている物を少し多めに買って回すことができます。食べ慣れないフードは、災害時に食べてくれないこともあるため、いつもの物を備えるのがおすすめです。人とペットの備蓄の組み立て方は高齢者とペットの在宅避難 備蓄の組み立て方で紹介しました。
まとめ

在宅避難の備蓄は、特別な物を一度にそろえるより、ふだん食べている物を少し多めに買って回していくほうが、ずっと続けやすくなります。置き場所を1か所に決め、使ったら買い足すだけで、家にはいつも食べ慣れた物がある状態をつくれます。完璧を目指さず、まずは家族の3日分から始めていきましょう。
- 食べながら備えて捨てない
- 長期保存食を土台に置く
- 置き場所は1か所にまとめる
- 手前から使い奥に足す
- 使ったら買い物メモに書く
- やわらかい物も回しておく
今日は、家にある缶詰やレトルト食品を1か所に集めるところから始めてください。そのうえで、買い足しが遅れた時期にも困らないよう、動かさない土台として長期保存食を少し置いておくと、ローリングストックがさらに安心なものになります。


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