実家で一人暮らしをしている親と、親がかわいがっている犬や猫。離れて暮らしていると、大きな地震のニュースを見るたびに「親は無事だろうか、あの子はどうしているだろう」と気がかりになるものです。足が弱くなった親にとって、ペットは毎日の張り合いである一方、災害のときには自分の避難と世話を同時に抱える重さにもなります。すぐに駆けつけられなくても、離れた家族が平時に「仕組み」を整えておくことで、親とペットの両方を守る準備はできます。この記事では、親の家でそろえておく備えと、離れた家族が担える役割を順番にまとめました。
- 災害時にすぐ行けない
- 親がペットを置いて逃げない
- 連絡がつかなかったら怖い
- ペットの備えが親任せ
- 何から頼めばいいか不明

実家の母が一人で猫と暮らしています。車で2時間かかるので、地震があっても私はすぐに行けません。母は「この子を置いていけない」と言うし、どうしたらいいのか。

離れているからこそ、できることがあります。駆けつける代わりに、連絡の取り方と、近くで動いてくれる人を先に決めておくんです。お母さんと猫のどちらも置き去りにしない準備は、遠くからでも進められますよ。
今日ひとつだけやるなら、親に電話をして「もしものとき、近くで様子を見に行ってくれる人はいる?」と聞いてみてください。名前が1人出てくれば、それが仕組みづくりの出発点になります。
一人暮らしの親とペットの防災の考え方

一人暮らしの親がペットを飼っている家では、災害のときに親が一人で「自分の身を守ること」と「ペットを守ること」を同時に背負うことになります。足が弱い親にとって、揺れのあとにペットを探してキャリーに入れ、荷物を持って移動するのは大きな負担です。だからこそ、親が一人で判断しなくて済むよう、備えと連絡の段取りを家族で先に決めておくことが大切です。そのうえで、ペットの持ち物を1つにまとめておくと、親も周りの人も動きやすくなるでしょう。考え方の土台を3つ紹介します。
ペットは支えにも負担にもなる
一人暮らしの高齢者にとって、ペットは話し相手であり、毎日の生活リズムを保つ支えになっていることが少なくありません。その一方で、災害のときは「この子を置いていけない」という思いから、親が避難をためらう理由にもなります。どちらも親にとって自然な気持ちなので、否定せずに受け止めたうえで、備えを考えていきましょう。
親だけで抱える場面を減らす
揺れのあと、一人暮らしの親は誰にも相談できないまま、自分の体の不調とペットの世話を同時に抱えることになります。けがをしていても、ペットのことを優先して無理をしてしまうかもしれません。親が一人で決めなくても済むように、「誰が見に来るか」「ペットをどうするか」を平時に決めておくことが、いちばんの備えになります。
離れた家族は仕組みをつくる係
離れて暮らす家族は、災害の直後に駆けつけることは難しいかもしれません。けれども、連絡の取り方を決める、近所の協力者にお願いする、ペットの預け先を探しておくといった「仕組みづくり」は、遠くからでもできる役割です。現場で動くのは近くの人、段取りを整えるのは離れた家族、と分けて考えると負担が軽くなります。
- 自分のけがや体調の不調
- 隠れたペットを探すこと
- キャリーと荷物の持ち運び
- 避難するかどうかの判断
親の家でそろえておく備え

一人暮らしの親の家では、人とペットの両方が数日間、家で過ごせる備えが基本になります。ただし、足が弱い親が重い荷物を運んだり、高い棚から物を出したりするのは難しいものです。備えは「親が一人で取り出せる場所と量」に合わせて置くことで、はじめて役に立つ備えになります。帰省のときに一緒に確かめておきたい備えを4つ紹介します。
人とペットの備蓄を一か所に
水や食料、親の薬、ペットのフードやトイレ用品を、なるべく同じ場所にまとめておきます。あちこちに分かれていると、停電で暗い中では探すだけで疲れてしまいます。人とペットの備蓄の組み立て方は高齢者とペットの在宅避難 備蓄の組み立て方で詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
ペットの情報カードを親と作る
名前、年齢、食べている量、薬、かかりつけの動物病院を1枚のカードに書いておきます。親が入院したり、親以外の人がペットを預かったりするときに、このカードがあれば世話を引き継ぎやすくなるはずです。帰省のときに親と一緒に書けば、ペットについて話すよい機会にもなります。写真を1枚添えておくと、はぐれたときの目印にもなるでしょう。
キャリーを玄関近くに置く
猫や小型犬のキャリーは、押し入れの奥ではなく、玄関や寝室の近くに置いておきます。揺れのあとに奥から引っ張り出すのは、足の弱い親には負担が大きいからです。ふだんからキャリーの扉を開けておき、ペットが中で休む習慣をつけておくと、いざというときに入れやすくなります。
親の体に無理のない量にする
備蓄は多いほど安心に思えますが、親が持ち上げられない重さの箱では使えません。水は2リットルのペットボトルより500ミリリットルのものを多めにするなど、親の手で扱える大きさに分けておくのがおすすめです。ペットのフードも、小分けの袋にしておくと開け閉めが楽になります。
- 備蓄の置き場所は一か所か
- 親の薬が数日分あるか
- ペットのフードと薬
- キャリーは取り出せるか
- 情報カードと写真
離れた家族の役割分担

離れて暮らす家族ができることは、思っている以上にたくさんあります。災害の直後に親の家へ行けなくても、連絡の段取りや協力者へのお願いは、平時にしかできない大切な準備です。「近くで動く人」と「遠くで段取りする人」を分けておくと、誰か一人に負担が集中しにくくなります。兄弟姉妹がいる場合は、役割を分け合うとさらに心強いでしょう。離れた家族が担える役割を4つ紹介します。
安否確認の方法を2つ決める
災害のあとは電話がつながりにくくなります。親の携帯電話のほかに、災害用伝言ダイヤル(171)や、近所の人を通じた確認など、連絡手段を2つ以上決めておきましょう。親がスマートフォンに慣れていない場合は、帰省のときに伝言ダイヤルの使い方を一緒に試しておくと安心です。停電中の情報の集め方は高齢者と情報収集する在宅避難の備えで紹介しています。
近くの協力者に合図を頼む
親の家の近くに住む親族やご近所の方に、「大きな地震のときは、様子を見てもらえませんか」と平時にお願いしておきます。頼むときは、親の持病やペットがいることも伝えておくと、協力者が家に入ったときに慌てずに済みます。合い鍵を預けるかどうかは、親の気持ちを聞いたうえで慎重に決めてください。ご近所への頼み方は近所の助け合い 高齢者の防災で決めておくことが参考になります。
ペットの預け先を探しておく
親がけがをしたり入院したりすると、ペットの世話をする人がいなくなります。そうした場面に備えて、ペットを数日預かってもらえる候補を、離れた家族が代わりに探しておきましょう。親族や友人、かかりつけの動物病院など、候補の考え方は災害時のペットの預け先 高齢者がいる家の決め方で詳しくまとめています。
兄弟姉妹で役割を分ける
兄弟姉妹がいる場合は、「連絡を取る人」「協力者とやりとりする人」「ペットを迎えに行く人」のように役割を分けておきます。全員が同時に親へ電話をかけると、かえって回線がふさがってしまうこともあるためです。決めた内容は紙に書き、親の家の冷蔵庫など目につく場所にも貼っておきましょう。
| 担う人 | 主な役割 | 平時にすること |
|---|---|---|
| 親本人 | 家で身を守る | 備蓄とキャリーの確認 |
| 近所の協力者 | 様子を見に行く | 持病とペットを伝える |
| 離れた家族 | 連絡と手配 | 連絡手段を2つ決める |
| 預け先 | ペットを預かる | 引き受けの約束 |

災害が起きたときの動き方

平時に決めた段取りは、災害が起きたときに迷わず動くためのものです。離れた家族は、ニュースを見て不安になっても、まずは決めておいた順番どおりに連絡を取ることから始めます。確認する順番は「親の無事」が先で、ペットはそのあとで大丈夫です。親が無事であれば、ペットのことも一緒に考えられるからです。災害が起きたときの動き方を3つ紹介します。
まず親の安否、次にペット
連絡がついたら、最初に親のけがや体調、家の中の様子を聞きます。そのうえで、ペットがどうしているか、フードや水が足りているかを確かめましょう。親がペットを探して家の中を動き回り、転倒することもあるため、「隠れていても無理に探さなくていいよ」と声をかけてあげてください。揺れのあとは、ペットも驚いて物陰に隠れていることが多いものです。
連絡がつかないときの動き方
何度かけても親につながらないときは、慌てて自分で向かう前に、近所の協力者に様子を見てもらえないか連絡します。協力者とも連絡がつかない場合は、伝言ダイヤルに伝言を残し、親の住む市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談する方法もあります。道路が通れない中で無理に向かうと、家族自身が危険にさらされることもあるので、落ち着いて順番に進めましょう。
親が家を離れるときのペット
家が壊れて住めなくなったときや、親が入院することになったときは、ペットをどうするかを決める必要があります。ペットと一緒に避難できる場所かどうかは、避難所や地域によって異なるため、お住まいの市区町村で確認しておいてください。一緒にいられない場合は、平時に決めた預け先に連絡し、情報カードと持ち物を渡してお願いします。
- 親のけがと体調
- 家の中の危険な場所
- ペットの居場所と様子
- 水・フード・薬の残り

よくある質問

一人暮らしの親とペットの防災について、よく寄せられる疑問をまとめました。すべてを一度に決めなくても大丈夫です。帰省のたびに1つずつ進めていけば十分です。親の体調や介護に関わることは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。ペットの体調はかかりつけの動物病院が頼りになります。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
親がペットを置いて避難しないと言います
まずは「置いていけない気持ちは分かる」と受け止めてください。家が安全なら、ペットと一緒に家で過ごす在宅避難という選択もあります。家を離れる必要があるときに備えて、ペットを連れて行ける場所や預け先を平時に調べておくと、親も避難を考えやすくなるかもしれません。
近所に頼める人がいません
親が利用している介護サービスの事業所やケアマネジャー、民生委員など、親の暮らしに関わっている人に相談してみてください。地域によっては、見守りの取り組みをしているところもあります。どのような支援があるかは地域で違うため、親の住む市区町村の福祉課や地域包括支援センターで確認しましょう。
合い鍵は預けたほうがいいですか
合い鍵があると、協力者が家に入って親やペットの様子を確かめやすくなります。ただし、鍵を預けることに抵抗を感じる親も少なくありません。親の気持ちを聞いたうえで、信頼できる親族に預ける、キーボックスを使うなど、親が納得できる方法を一緒に選んでください。
親が入院したらペットはどうなりますか
入院中は、ほかの人がペットの世話をする必要があります。平時に預け先の候補を決めておき、情報カードとフード、薬をまとめたバッグを用意しておくと、引き継ぎがスムーズになるでしょう。預け先が見つからないときは、かかりつけの動物病院に相談してみてください。
ペットの備えは誰がそろえればいいですか
買い物が負担になっている親の場合は、離れた家族が通信販売で届けるのも一つの方法です。フードやトイレ用品は、ふだん使っている物と同じものを選ぶと、ペットが災害時も落ち着いて過ごしやすくなります。消費期限のある物は、帰省のときに一緒に確かめて入れ替えましょう。
まとめ

一人暮らしの親がペットと暮らしている家では、災害のときに親が一人で自分とペットの両方を抱えることになりがちです。離れた家族はすぐに駆けつけられなくても、連絡の段取りや協力者へのお願い、ペットの預け先探しといった仕組みづくりを担えます。親の家の備えと、家族の役割分担を平時に決めておけば、親もペットも一人きりにしない準備ができます。
- 親が一人で決めない仕組み
- 備蓄は親が取り出せる場所に
- キャリーは玄関近くに
- 連絡手段を2つ決める
- 近くの協力者にお願い
- 確認は親の無事が先
今日は、親に電話をして、近くで様子を見に行ってくれる人がいるかを聞いてみてください。次の帰省では、ペットの情報カードを親と一緒に書き、持ち物を1つのバッグにまとめておくと安心です。写真を入れられるバッグなら、親以外の人がペットを預かるときにも目印になるでしょう。


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