家具を固定したほうがいいのは分かっている。でも賃貸だから壁にネジは打てないし、退去のときに何を言われるか心配で、結局そのままになっている。そんな方は少なくありません。手をつけられずにいるのは、怠けているからではなく、「穴を開けずにできる方法」が分かりにくいからなのです。突っ張り棒と耐震マットを組み合わせれば、壁も床も傷つけずに家具の転倒をかなり防げます。この記事では、賃貸で使える家具固定の器具の選び方と付け方、高齢の家族がいる家で先に守りたい場所を紹介します。
- 壁にネジ穴を開けられない
- 退去時の修繕費が心配
- 大家さんに聞きづらい
- 突っ張り棒が効くのか不安
- どの家具から手をつけるか

賃貸なので、金具で壁に留めるのは無理だと思ってあきらめていました。義母の部屋のタンスが前から気になってはいるんですけど。

あきらめなくて大丈夫ですよ。穴を開けない器具でも、組み合わせ方を知っていれば十分に備えられます。まずは一番気になっているタンス1台から始めてみましょう。
今日ひとつだけやるなら、気になっている家具の上と天井のすき間を、メジャーで測ってみてください。その数字があれば、合う突っ張り棒をすぐに選べます。
賃貸で家具固定が進まない理由

賃貸住宅に住んでいる家庭では、持ち家に比べて家具固定が後回しになりがちです。理由ははっきりしていて、壁に穴を開けると原状回復の費用がかかるかもしれない、という心配が先に立つからです。けれども地震のときに倒れた家具は、けがの原因になるだけでなく、通り道をふさいで逃げ遅れにもつながります。穴を開けられないことは、家具固定をしない理由にはなりません。手が止まりやすい理由を3つ見ていきましょう。
退去時の原状回復が気になる
賃貸では、退去するときに部屋を元の状態に戻す「原状回復」が求められます。壁のネジ穴が借りた人の負担になるかどうかは、契約の内容や穴の大きさによって変わります。だからこそ、最初から穴を開けない器具を選べば、退去のときの心配をせずに済みます。どうしても金具を使いたいときは、自己判断で進めず、先に管理会社へ相談するのが安心でしょう。
大家さんに相談しにくい
「家具を固定したい」と大家さんや管理会社に伝えるのは、少し気が引けるかもしれません。けれども家具の転倒防止は、建物を守ることにもつながるため、話を聞いてもらえることもあります。相談するときは「高齢の家族がいるので、地震に備えたい」と目的をそのまま伝えるのが一番です。穴を開けない方法で進めるなら、相談がなくても始められます。まずはできる範囲から手をつけてください。
器具の効き目が分かりにくい
突っ張り棒や耐震マットは手軽なぶん、「本当に効くのだろうか」と不安になる方も多いはずです。実際、それぞれを1つだけ使うより、組み合わせたほうが効果が高まるとされています。上は突っ張り棒、下は耐震マットやストッパーと、上下から押さえるのが基本の考え方です。付け方を間違えると効き目が落ちるため、次の章で正しい使い方を紹介します。
- 寝る場所の近くのタンス
- 背の高い本棚や食器棚
- テレビと仏壇
- 冷蔵庫
- 通り道にある棚
賃貸で穴を開けない家具固定の方法

壁や床に穴を開けずに使える家具固定の器具は、主に3種類あります。家具と天井の間に入れる突っ張り棒、家具の下に貼る耐震マット、家具の前の下にかませるストッパーです。どれもホームセンターや通販で手に入り、工具がなくても取り付けられます。背の高い家具は「上と下の両方」を押さえ、低い物は下だけで止めると覚えておくと迷いません。それぞれの使い方を4つに分けて紹介します。

突っ張り棒で上を押さえる
突っ張り棒は、家具の天板と天井の間に立てて、上から押さえつける器具です。タンスや本棚、食器棚のような背の高い家具に向いています。家具の手前ではなく、壁に近い奥側に左右2本立てるのが効果を出すコツです。手前に立てると、揺れたときに家具が前に傾いて外れやすくなります。天井との間にすき間がない家具や、天井が斜めの部屋では使えないので、取り付ける前に確かめておきましょう。
耐震マットで下を止める
耐震マットは、粘着性のあるジェル状のシートを家具の底の四隅に貼って、すべりや転倒を防ぐものです。テレビや電子レンジ、仏壇のような、背が低く台の上に置いてある物に向いています。貼る前に家具の底と床のほこりや油をよく拭き取らないと、粘着力が十分に出ません。床材によっては跡が残ることもあるため、目立たない場所で試すか、説明書で使える床を確かめておくと安心です。
ストッパーで前を少し上げる
ストッパーは、家具の前側の下にはさみこむ細長いくさび形の器具です。家具がわずかに後ろへ傾くので、揺れたときに前へ倒れにくくなります。突っ張り棒と一緒に使うと、上下から家具を押さえる形になり、1つだけより安定しやすくなります。床に貼りつけないタイプが多いので、賃貸でも使いやすい器具です。引き出しや扉が開けにくくならない厚さを選びましょう。
家具の向きと置き場所を変える
器具を使わなくても、家具の置き方を変えるだけで危険は減らせます。寝る場所や座る場所に向かって倒れない向きに置き直したり、背の高い家具を廊下や出入り口から離したりする方法です。重い物を下の段に、軽い物を上の段に入れ替えるだけでも、家具は倒れにくくなります。お金がかからず今日からできる方法なので、器具を買う前に一度部屋を見回してみてください。
- 突っ張り棒(背の高い家具)
- 耐震マット(テレビや仏壇)
- ストッパー(前側の下)
- 飛散防止フィルム(ガラス)
- 扉の開き止め(食器棚)
突っ張り棒の選び方と付け方

賃貸の家具固定の中心になるのが突っ張り棒です。ただし、サイズが合っていなかったり、天井の弱いところに当てていたりすると、本来の力を発揮できません。買う前に確かめることと、付けたあとに続けることを知っておけば、効き目を保ちやすくなります。選ぶ前に「すき間の長さ」と「天井の硬さ」の2つを確かめることが、失敗しない一番の近道です。手順を4つに分けて紹介します。

天井と家具のすき間を測る
突っ張り棒は、伸び縮みできる長さの範囲が商品ごとに決まっています。家具の天板から天井までのすき間をメジャーで測り、その長さが範囲の真ん中あたりに入る物を選びましょう。伸ばしきった状態で使うと押さえる力が弱くなるので、長さに余裕のあるサイズを選ぶのが大切です。測るときは、家具の左右の奥側を2か所とも測っておきます。床や天井がわずかに傾いていて、左右で長さが違うことがあるからです。
天井の硬い場所を探す
天井は場所によって硬さが違い、板の下に柱が通っていない部分は、押すとたわむことがあります。そこに突っ張り棒を当てると、揺れたときに天井が負けて外れやすくなります。天井を軽くたたいて、音が詰まって硬く感じる場所を選ぶか、壁に近い位置に当てるのが目安です。硬い場所が見つからないときは、天井側に板を1枚はさむと、力が広く分散されます。脚立に上る作業は、高齢の家族ではなく、ほかの家族が行うようにしてください。
奥側の左右に2本立てる
突っ張り棒は1本だけでは家具がねじれるように動くため、左右に1本ずつ、計2本を使うのが基本です。立てる位置は、前で触れたとおり壁に近い奥側にします。家具の天板が弱いときは、天板の上にも板をはさんでから突っ張ると、天板が割れにくくなります。最後に、手で家具を軽く前後に揺らしてみて、ぐらつきがないかを確かめましょう。動くようなら、締め直すか位置を変えます。
ときどき締め直す
突っ張り棒は、時間がたつと少しずつゆるむことがあります。季節の変わり目や、大きな地震のあとに、ゆるんでいないかを確かめる習慣をつけておくと安心です。手で回して簡単に動くようなら、すぐに締め直してください。耐震マットも年月とともに粘着力が落ちるため、説明書にある交換の目安に合わせて貼り替えます。カレンダーに「家具の点検」と書いておくと忘れにくくなるでしょう。
高齢の家族がいる賃貸で優先すること

家中の家具をいっぺんに固定しようとすると、費用も手間もかかって途中で止まってしまいます。高齢の家族がいる家庭では、守る場所に順番をつけて、少しずつ進めるのが現実的です。とくに足腰の弱い方は、家具が倒れてきたときにとっさによけることができません。最初に守るのは「寝ている場所」と「逃げる通り道」の2つです。優先したいことを4つ紹介します。
寝る場所のまわりを先に守る
夜中の地震では、明かりがなく、目が覚めてもすぐには動けません。寝ている人の上に家具が倒れてくると、けがをするだけでなく、自分では抜け出せなくなるおそれがあります。布団やベッドの近くにある背の高い家具を、真っ先に固定するか、別の場所へ動かしてください。寝室の家具固定の考え方は高齢者がいる家庭の家具固定 まず倒れない場所からでも紹介しています。
部屋の出入り口をふさがない
倒れた家具がドアの前をふさぐと、部屋から出られなくなります。高齢の家族は、倒れた家具をまたいだり、どかしたりするのが難しいものです。部屋のドアから廊下、玄関までの通り道に、倒れそうな家具を置かないようにしましょう。杖や歩行器を使っている方は、ふだんから通り道を広めに空けておくと、地震のあとも動きやすくなります。夜中に揺れたときの動き方は高齢者とどう動くか判断する具体的な手順にまとめました。
ガラスの飛び散りを防ぐ
地震で割れた窓ガラスや食器棚のガラスは、床に散らばって足をけがする原因になります。賃貸でも、はがせるタイプの飛散防止フィルムなら、窓や棚のガラスに貼って使えます。食器棚の扉には開き止めを付けて、中の食器が飛び出さないようにしておくと安心です。寝る場所の近くには、スリッパや靴を置いておくと、割れた物の上を歩かずに済みます。足元の備えは高齢者の避難で見落としがちな靴と足元の備えで紹介しました。
自分でできないときは頼る
重い家具を動かしたり、脚立に上って突っ張り棒を付けたりするのは、家族だけでは難しいこともあります。自治体によっては、高齢者のいる世帯を対象に、家具固定の器具の取り付けを手伝ったり、費用の一部を助成したりしているところがあります。お住まいの市区町村の防災担当課や福祉課に、家具固定の支援があるか問い合わせてみてください。担当のケアマネジャーがいれば、相談先を一緒に探してもらえることもあります。対象や内容は自治体ごとに違うため、必ず確認しましょう。
- 枕元に向いた背の高い家具
- ドアの前にある本棚
- 廊下に置いた収納棚
- 上の段に重い物
- ガラス戸の食器棚の近くの寝床
よくある質問

賃貸の家具固定について、よく寄せられる疑問をまとめました。ここで紹介するのは一般的な目安で、使える器具や取り付け方は、商品の説明書や住まいの造り、契約の内容によって変わります。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。退去時の取り扱いや支援の制度は、管理会社やお住まいの市区町村にもあわせて確認してください。
突っ張り棒だけで大丈夫ですか
突っ張り棒だけでも何もしないよりは倒れにくくなりますが、1つだけに頼るのはおすすめしません。家具の下に耐震マットやストッパーを組み合わせ、上下から押さえると安定しやすくなります。とくに寝る場所の近くの家具は、組み合わせて使ってください。
天井が弱そうで心配です
押すとたわむような天井には、そのまま突っ張り棒を当てないでください。壁に近い位置を選ぶか、天井側に長めの板をはさんで力を分散させます。それでも不安なときは、家具の置き場所を変えるか、背の低い家具に替えることも考えてみましょう。
耐震マットで床に跡が残りませんか
床材や商品によっては、はがしたあとに跡やべたつきが残ることがあります。使える床の種類が説明書に書かれているので、貼る前に確かめてください。気になる場合は、目立たない場所で試してから使うと安心です。
管理会社に言わずに付けてもいいですか
穴を開けない器具であれば、多くの場合は相談なしで使えます。ただし契約で決まりがある場合もあるため、心配なときは確認しておくと安心です。壁に金具を付けたいときは、必ず先に管理会社や大家さんに相談してください。
冷蔵庫はどう固定すればいいですか
冷蔵庫は重く、倒れたり動いたりすると大きな危険になります。背面の取っ手にベルトを通して壁に留める方法が一般的ですが、壁に穴を開ける器具もあります。賃貸では、上に乗せる突っ張りタイプや、下に敷くマットなど、穴を開けない器具を選びましょう。
まとめ

賃貸でも、穴を開けずに家具の転倒を防ぐ方法はあります。背の高い家具は突っ張り棒とマットで上下から押さえ、寝る場所と通り道から順番に守っていくことが、高齢の家族を守る近道です。全部を一度にそろえなくても大丈夫です。一番気になっている家具1台から始めてください。
- 穴を開けない器具で備えられる
- 突っ張り棒は奥側に左右2本
- 下はマットやストッパーで
- すき間と天井の硬さを確認
- 寝る場所と通り道が先
- 難しければ自治体に相談
今日は、気になっている家具の上と天井のすき間を測るところから始めてみてください。数字が分かれば、合う突っ張り棒はすぐに選べます。


コメント