地震や急な体調の変化で、高齢の家族が倒れたとき。その場に居合わせた人や救急隊にまず聞かれるのは、名前や持病、飲んでいる薬、家族の連絡先です。ところが、驚きや痛みで本人がうまく話せないこともありますし、耳が遠くて質問が聞き取れないこともあるでしょう。緊急連絡カードは、本人が話せないときに代わりに伝えてくれる紙1枚です。書く項目を5つに絞れば、今日の夕方にでも作れます。この記事では、高齢の家族にカードが必要な理由と、書く項目の決め方、持たせる場所、作ったあとの見直し方をまとめました。
- 義母が外で倒れたら誰が分かる
- 飲んでいる薬を言えない
- 耳が遠くて質問が聞こえない
- 私の連絡先を覚えていない
- 何を書けばいいか分からない

義母は薬を何種類も飲んでいますが、名前までは私も覚えていません。私がいないときに倒れたら、誰にも伝わらないのではと心配です。

全部を覚えておく必要はありません。紙に書いて、決まった場所に入れておけば十分です。まずは書く項目を5つに絞るところから始めましょう。
今日ひとつだけやるなら、義母の財布に入る大きさの紙に、家族2人の名前と電話番号を書いて入れてみてください。それだけでも、もしものときに家族へ連絡が届きやすくなります。
緊急連絡カードが高齢者に必要な理由

家族と一緒にいるときなら、持病や薬のことは家族が答えられます。けれども、災害や急病は、家族がそばにいる時間を選んではくれません。緊急連絡カードは、家族がいないときに、家族の代わりに答えてくれる道具です。とくに高齢の方は、話す・聞く・思い出すのどこかで、いざというときにつまずきやすくなります。カードが役に立つ3つの場面を見ていきましょう。
本人が話せない場面がある
地震でけがをしたり、急に具合が悪くなったりすると、元気な大人でも落ち着いて話すのは難しいものです。高齢の方であれば、なおさら言葉が出てこないことがあります。意識がはっきりしないときや、痛みで話せないときでも、カードがあれば周りの人が必要なことを知ることができます。救急の現場では、持病や飲んでいる薬が分かるだけで、手当ての判断がしやすくなると言われています。
耳や記憶が答えを邪魔する
耳が遠いと、周りが騒がしい中で「お名前は」「どこが痛いですか」と聞かれても、うまく聞き取れません。また、ふだんはしっかりしていても、慌てると家族の電話番号や薬の名前が思い出せなくなるのは自然なことです。カードに「耳が遠いので紙に書いてください」と書いておくだけで、周りの人の接し方が変わります。補聴器や入れ歯の使い方は高齢者の入れ歯・補聴器・メガネの防災の備えでも紹介しています。
家族がそばにいない時間
パートや買い物で家を空けている間に、大きな揺れが来ることもあります。高齢の家族が一人で散歩や通院に出ている最中かもしれません。家族が駆けつけるまでの時間を、カードがつないでくれます。カードに書かれた電話番号から家族に連絡が入れば、病院や避難先で本人と再会しやすくなるでしょう。離れて暮らす親の場合も考え方は同じで、離れて暮らす親の防災 遠距離でもできる備えもあわせて読んでみてください。
- 外出先で倒れたとき
- 救急車で運ばれるとき
- 避難所で体調を崩したとき
- 家族とはぐれたとき
- 家で一人のときの急病
緊急連絡カードの作り方

緊急連絡カードは、市販の用紙がなくても、厚紙とペンがあれば作れます。大切なのは、きれいに作ることよりも、読んだ人がすぐに分かることです。書く項目は5つに絞り、知らない人が読んでも迷わない短い言葉で書いてください。項目が多すぎると、急いでいるときに大事なことが見つけにくくなってしまいます。書く項目と、薬の書き方、カードの大きさを順に紹介します。
書く項目は5つに絞る
カードに書くのは、氏名と生年月日、緊急連絡先、持病とかかりつけの病院、飲んでいる薬とアレルギー、伝え方の配慮の5つです。緊急連絡先は、電話がつながらないときのために、2人分書いておきましょう。たとえば同居の家族と、近くに住むきょうだいの組み合わせです。伝え方の配慮には、「耳が遠い」「入れ歯あり」「物忘れがある」など、接する人に知っておいてほしいことを書きます。
- 氏名と生年月日
- 緊急連絡先を2人分
- 持病とかかりつけの病院
- 飲んでいる薬とアレルギー
- 耳が遠いなど伝え方の配慮
薬はお薬手帳の写しで補う
薬の名前は長く、何種類も飲んでいると、カードに書ききれません。カードには、とくに大事な薬だけを書き、残りはお薬手帳の最新ページの写しを折りたたんで一緒に入れておく方法がおすすめです。血をさらさらにする薬、インスリン、心臓の薬などは、けがや手当てに関わるので、カードの目立つところに書いておきます。どの薬が大事かは、かかりつけ医や薬剤師に聞くと教えてもらえます。薬の備え方は高齢の親の防災の備えと常備薬の持ち出し方で紹介しています。
名刺の大きさで2枚作る
カードの大きさは、財布やパスケースに入る名刺くらいが扱いやすいでしょう。字は大きめに、黒いペンではっきり書くと、老眼の方や暗い場所でも読みやすくなります。同じカードを2枚作り、1枚は持ち歩く用、もう1枚は家に置く用にします。水に濡れても読めるよう、小さな透明の袋に入れるか、透明なテープで表面を覆っておくと安心です。

書きにくい項目は空欄でよい
病名がはっきりしない、かかりつけ医が何か所もあるなど、書きにくい項目が出てくることもあります。そのときは無理に埋めず、空欄のまま作って構いません。完璧なカードを目指して作らずにいるより、連絡先だけでも書いたカードを今日持たせるほうが役に立ちます。一方で、銀行の暗証番号や、マイナンバーの数字のような、落としたときに困る情報は書かないようにしてください。持ち歩く用のカードには、自宅の住所を書かない家庭もあります。
カードを持たせる場所と家に置く場所

せっかく作ったカードも、もしものときに見つけてもらえなければ役に立ちません。救急隊や周りの人が探しそうな場所に入れておくことが大切です。カードは「本人が必ず持っている物」と「家の中で決まった場所」の2か所に置くと、外でも家でも見つけてもらいやすくなります。財布やバッグ、家の冷蔵庫、そしてスマホの3つを、順番に見ていきましょう。どこに入れたかは、家族全員で共有しておいてください。
財布と外出用のバッグ
持ち歩く用のカードは、財布の中の、保険証と同じ場所に入れるのがおすすめです。倒れた人の身元を確かめるときに、財布の中の保険証を確認することが多いため、そのすぐ隣にあれば気づいてもらえます。財布を持たずに散歩に出る方は、杖やいつも使う手提げにカードを結びつけておくと安心です。カードに「緊急連絡先」と大きく書いておくと、見つけた人がすぐに中身の意味を分かってくれます。
冷蔵庫の救急医療情報キット
家に置く用のカードは、冷蔵庫に入れておく方法があります。多くの自治体では、「救急医療情報キット」などの名前で、持病や連絡先を書いた用紙を入れる筒を配っています。冷蔵庫はどの家にもあり、場所が決まっているので、救急隊が情報を探しやすい場所として使われています。玄関や冷蔵庫に目印のシールを貼る仕組みになっていることが多いようです。配布の有無や受け取り方は地域によって違うため、お住まいの市区町村の高齢者福祉の窓口か、地域包括支援センターで確かめてみてください。
スマホの緊急情報の設定
高齢の家族がスマホを持っているなら、スマホにも緊急時の情報を入れておけます。iPhoneでは「メディカルID」、Androidでは「緊急情報」という機能があり、画面のロックを外さなくても、持病や緊急連絡先を見られるように設定できます。ただし、電池が切れると見られないので、スマホは紙のカードの代わりではなく、追加の備えと考えてください。設定の場所は機種によって違うので、販売店で一緒に確認してもらうのも一つの方法です。

作ったあとの見直し方

緊急連絡カードは、作ったときがいちばん正確で、そのあとは少しずつ古くなっていきます。薬が変わったり、連絡先の電話番号が変わったりするたびに、カードと実際の暮らしにずれが生まれるからです。古い情報のカードは、ないよりは助けになりますが、薬の情報が違うと手当ての判断を迷わせることもあります。見直しを忘れないための工夫と、本人と一緒に確かめる方法を紹介します。難しく考えず、年に数回、数分だけ時間をとれば十分です。
薬が変わった日に書き直す
いちばん見直しが必要なのは、飲んでいる薬が変わったときです。病院や薬局から帰ってきたら、お薬手帳の新しいページと一緒に、カードの薬の欄も書き直しましょう。お薬手帳の写しを入れている場合は、新しい写しに入れ替えるだけで済みます。カードの隅に「○年○月 更新」と日付を書いておくと、どれくらい前の情報なのかが、読む人にも家族にも分かります。
見直す日を決めておく
薬が変わらなくても、連絡先や持病の情報は少しずつ変わります。見直す日をあらかじめ決めておくと、忘れずに済むでしょう。本人の誕生日や、防災の日の9月1日など、毎年必ず思い出す日に合わせると続けやすくなります。家族の誰が見直すのかも、一緒に決めておいてください。担当がはっきりしていると、「誰かがやっているだろう」と思って放っておくことを防げます。
本人と一緒に読み合わせる
カードは、家族が書いて持たせるだけでなく、本人と一緒に読み合わせることが大切です。どこに入っているか、何が書いてあるかを本人が知っていれば、いざというときに自分からカードを差し出せます。「何かあったら、これを見せてね」と一言添えるだけで、カードは本人の安心にもつながります。物忘れのある家族の場合は、無理に覚えてもらおうとせず、いつも同じ場所に入れておくことを優先しましょう。認知症のある家族との備えは認知症の家族と避難する具体的な方法で紹介しています。
| 見直すとき | 書き直す欄 |
|---|---|
| 薬が変わった日 | 薬とお薬手帳の写し |
| 入院や新しい診断 | 持病とかかりつけの病院 |
| 家族の引っ越しや機種変更 | 緊急連絡先 |
| 毎年の誕生日 | すべての欄と更新日 |
よくある質問

緊急連絡カードの作り方について、よく寄せられる疑問をまとめました。カードの形や置き場所に正解は一つではないので、本人が持ち歩きやすい形を選ぶことがいちばん大切です。自治体の配布物やスマホの機能は地域や機種によって違うため、迷ったときは市区町村の窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーに聞いてみてください。気になる質問だけを読んでいただければ十分です。
市販のカードや自治体の用紙を使ってもいいですか
もちろん使って構いません。自治体によっては、緊急連絡カードや救急医療情報の用紙を配っていることがあり、項目があらかじめ印刷されているので書きやすくなっています。配布の有無は、お住まいの市区町村の高齢者福祉の窓口や地域包括支援センターで確かめてみてください。
血液型は書いたほうがいいですか
書いても構いませんが、優先度は高くありません。病院で輸血が必要なときは、改めて検査をしてから行うのが一般的です。カードの限られた場所には、持病や飲んでいる薬、アレルギーのほうを優先して書くことをおすすめします。
本人が持ち歩くのを嫌がります
「病人扱いされているようで嫌だ」と感じる方もいます。その場合は、「私が安心したいから持っていてほしい」と、家族の気持ちとして伝えてみてください。財布の中など、ふだんは目に入らない場所に入れておけば、本人の負担も小さくなります。家族が同じようにカードを持つと、受け入れてもらいやすくなることもあります。
個別避難計画とカードは何が違いますか
個別避難計画は、災害のときに誰がどう避難を手伝うかを、市区町村や支援者と一緒に決めておく計画です。緊急連絡カードは、本人の情報を、その場に居合わせた人に伝えるための紙です。役割が違うので、両方あると心強いでしょう。計画の作り方は個別避難計画の作り方と相談先の全手順で紹介しています。
ペットがいる場合も書いたほうがいいですか
本人が一人暮らしでペットを飼っている場合は、「家に犬が1匹います」のように書いておくと、本人が運ばれたあとにペットのことを家族へ伝えてもらいやすくなります。ペットを預かってくれる人の連絡先も、家に置く用のカードに書いておくと安心です。
カードを落としたら困りませんか
名前や電話番号が書かれているため、落とすことへの心配は自然なものです。そのため、暗証番号やマイナンバーの数字のような、悪用されると困る情報は書かないようにしてください。持ち歩く用のカードには住所を書かず、家に置く用のカードにだけ書く方法もあります。
まとめ

緊急連絡カードは、高齢の家族が話せないときや、家族がそばにいないときに、代わりに必要なことを伝えてくれる紙1枚です。書く項目は、氏名、緊急連絡先2人分、持病とかかりつけの病院、薬とアレルギー、伝え方の配慮の5つに絞りましょう。2枚作って財布と冷蔵庫に置き、薬が変わった日と誕生日に見直せば、カードはいつでも頼れる状態を保てます。救急医療情報キットの配布など、地域の仕組みはお住まいの市区町村で確かめてください。
- 書く項目は5つに絞る
- 緊急連絡先は2人分
- 大事な薬は目立つ場所に
- 2枚作って財布と冷蔵庫へ
- 薬が変わった日に書き直す
- 本人と一緒に読み合わせる
今日は、財布に入る大きさの紙に、家族2人の名前と電話番号を書いて、高齢の家族の財布に入れてみてください。持病や薬の欄は、次にお薬手帳を開いたときに書き足せば大丈夫です。

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