大きな揺れがおさまったあと、床に散らばった食器や倒れた家具を見ると、「早く元に戻さなきゃ」と気持ちが焦るものです。高齢の家族も同じで、じっとしていられずに割れた物を拾い始めることがあります。ところが、地震のけがは揺れている最中だけでなく、そのあとの片付けの時間にも起きやすいと言われています。片付けは急がなくて大丈夫です。足元を守り、順番を決めてから手をつければ、けがと転倒の多くは防げます。この記事では、片付けでけがが起きる理由と、始める前に確かめること、安全な片付けの順番、高齢の家族への役割の頼み方をまとめました。
- 義母が一人で片付け始める
- 割れたガラスで足を切る
- 散らばった物につまずく
- 重い家具を戻して腰を痛める
- どこから手をつけるか分からない

地震のあと、家の中がめちゃくちゃになったらと思うと不安です。義母は几帳面なので、きっとすぐに片付けようとすると思います。

元に戻したい気持ちは自然なものですよね。片付けは、順番を決めておくだけで危なさがかなり変わります。まずは足元を守ることと、一人で重い物を持たないこと、この2つから考えてみましょう。
今日ひとつだけやるなら、家族それぞれの寝床のそばに、かかとのある室内履きを1足ずつ置いてみてください。揺れのあとの最初の一歩が、ぐっと安全になります。
地震の片付けで高齢者がけがをする理由

揺れのあとの家の中は、ふだんの家とはまったく別の場所になっています。床にはガラスや食器のかけらが散らばり、引き出しは飛び出し、通り慣れた廊下にも物が倒れているかもしれません。片付けのけがは、散らばった物・焦る気持ち・疲れの3つが重なったときに起きやすくなります。足腰が弱くなった高齢の家族ほど、このどれもが転倒やけがにつながりやすいのが実情です。3つの理由を順番に見ていきましょう。
割れたガラスと散らばった物
地震のあとの床には、割れた窓ガラスや食器、額縁のかけらが細かく飛び散っています。小さな破片は目で見ても気づきにくく、はだしや薄いスリッパで歩くと足の裏を切ってしまいます。足をけがすると歩くこと自体がつらくなり、在宅避難の暮らしも、いざというときの避難も難しくなります。床に落ちた本や衣類も、杖をついて歩く高齢者にはつまずきの原因になるでしょう。
片付けを急ぐ気持ち
散らかった家を見ると、多くの人は「早く元どおりにしたい」と感じます。とくに長年その家で暮らしてきた高齢の方にとって、自分の家が荒れたままなのはつらいものです。その気持ちから、素手でかけらを拾ったり、倒れたタンスを一人で起こそうとしたりします。焦りから生まれる「ついでにここも」が、けがにつながりやすい動きです。片付けたい気持ちを否定せず、順番を一緒に決めることが大切になります。
疲れと余震の重なり
大きな地震のあとは、夜もよく眠れず、緊張が続いて体が思った以上に疲れています。疲れていると足が上がりにくくなり、小さな段差や散らばった物にもつまずきやすくなるのです。さらに、片付けの最中に余震が来ると、手に持った物や棚の上の物が落ちてくることもあります。片付けは一度に終わらせようとせず、こまめに休みながら少しずつ進めてください。余震が続くうちは、高い場所の物を後回しにすると安心です。
- はだしや脱げやすいスリッパ
- 素手でガラスを拾う
- 倒れた家具を一人で起こす
- 暗い時間に片付けを始める
- 余震が続く中で高い所を触る
片付けの前に安全を確かめる手順

片付けを始める前に、まず「この家で片付けをしても大丈夫か」を確かめます。家そのものが傷んでいたり、ガスのにおいがしたりする中で作業を始めると、けがどころでは済まないことがあるためです。片付けの最初の仕事は、物を動かすことではなく、足元と家の安全を確かめることです。確かめることは多くありません。足元の守り方、ガス・電気・水の確認、家の傷みの見方の3つを、順番に紹介します。
足元を守ってから動く
揺れがおさまったら、立ち上がる前に、まず足元を守るものを履きます。かかとのある室内履きか、ふだん外で履いている靴がおすすめです。かかとのないスリッパは脱げやすく、高齢者の転倒やガラスの踏み抜きにつながりやすいので避けましょう。片付けのときは、厚手の軍手やゴム手袋もあると手を守れます。足元の備えについては高齢者の避難で見落としがちな靴と足元の備えでもくわしく紹介しています。
ガス・電気・水の確認
ガスのにおいがしたら、火をつけたり電気のスイッチに触れたりせず、窓を開けて外に出てから、ガス会社に連絡してください。電気は、停電から復旧したときに、倒れた電気ストーブなどから火が出ることがあります。家を離れるときや、電気製品が倒れているときは、ブレーカーを落としておくと安心です。水道は、配管が傷んで水漏れしていないかを確かめましょう。ガスや電気の復旧のしかたは地域や会社によって違うため、案内に従ってください。
家の傷みと余震の見方
壁に大きなひびが入っている、柱や床が傾いている、扉が開かなくなったといった場合は、家そのものが傷んでいるかもしれません。そのようなときは片付けを始めず、安全な場所に移ることを考えます。大きな地震のあとは、自治体が建物の危険度を調べて紙を貼って知らせることがあるので、その案内も確かめてください。また、片付けを始める前に、壊れた家や家財の写真を撮っておくと、あとで罹災証明の手続きに役立ちます。手続きは罹災証明の手続き 高齢の親の代理申請の段取りで紹介しています。

けがを防ぐ片付けの順番

安全を確かめたら、いよいよ片付けです。ここで大切なのは、家じゅうを一度にきれいにしようとしないことです。まずは「歩く場所」と「眠る場所」だけを安全にすれば、在宅避難の暮らしは始められます。台所や押し入れの奥は、そのあとで構いません。片付けの順番を決めておくと、家族の誰が見ても同じように動けるので、高齢の家族も迷わずに済みます。順番と、重い物やガラスの扱い方を見ていきましょう。
通り道と寝る場所から
最初に片付けるのは、寝室からトイレまでの通り道です。夜中にトイレへ行くとき、暗い中で物につまずくのを防ぐためです。通り道は、杖や手すりを使って歩ける幅を空けることを目標にしましょう。次に、高齢の家族が眠る布団やベッドのまわりを片付けます。ここまでできれば、ひとまず家で休める状態になったと考えて大丈夫です。

重い物は一人で持たない
倒れたタンスや本棚、冷蔵庫を起こすのは、体の大きな大人でも一人では危険です。無理に持ち上げると、腰を痛めたり、家具が再び倒れて下敷きになったりするおそれがあります。重い物は二人以上で持つか、中身を出して軽くしてから動かしてください。物を持ち上げるときは、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて体に近づけて持つと腰の負担を減らせる可能性があります。痛みが出たらすぐに作業をやめ、持病のある方は無理をしないようにしましょう。
ガラスと刃物の始末
割れたガラスは、大きなかけらを手袋をはめた手で拾い、細かい破片はほうきで集めます。最後に、ガムテープや濡らした新聞紙で床を押さえると、目に見えない破片まで取りやすくなります。集めたガラスや割れた包丁は厚紙や新聞紙で包み、「ワレモノ」「キケン」と書いてから袋に入れると、ごみを運ぶ人のけがも防げます。災害時のごみの出し方は自治体によって違うので、お住まいの市区町村の案内を確かめてください。
- かかとのある室内履き
- 厚手の軍手とゴム手袋
- ほうきとちりとり
- ガムテープと新聞紙
- 厚手のごみ袋
- 懐中電灯やヘッドライト
高齢の家族に任せる役割

高齢の家族に「危ないから座っていて」と伝えても、じっとしていられないことはよくあります。家族の役に立ちたい、自分の家は自分で守りたいという気持ちは、とても大切なものです。片付けから外すのではなく、けがの心配が少ない役割を任せると、本人の気持ちも体も守れます。役割があると気持ちが落ち着き、災害のあとに体を動かさなくなって弱ってしまうのを防ぐことにもつながります。頼み方を3つ紹介します。
座ってできる仕事を頼む
高齢の家族には、椅子に座ったままできる仕事を頼むのがおすすめです。たとえば、割れていない食器を新聞紙で包む、散らばった書類や写真を仕分ける、使える物と捨てる物を分けるといった作業です。床にしゃがむ仕事や、踏み台に乗る仕事は、高齢の家族には任せないようにしましょう。座ってできる仕事でも、長く続けると疲れるので、終わりの時間を決めておくと安心できます。
休む時間を先に決める
片付けは、始める前に「1時間やったら休む」のように、休む時間を決めておきます。疲れてから休むのではなく、疲れる前に休むほうが、転倒やけがを防げるからです。休むときは水分もとり、トイレに行くきっかけにすると、体調を崩しにくくなります。息苦しさやめまい、胸の痛みが出たときは、すぐに作業をやめて横になり、様子がおかしければ医療機関に相談してください。災害のあとの体力の落ち方については災害時の高齢者の体力低下 在宅避難でできる予防も参考になります。
「自分でやる」と言われたら
「自分の部屋は自分で片付ける」と言われたら、頭ごなしに止めず、一緒にやる形をとってみましょう。本人が指示を出し、重い物や高い所は家族が動かす、という分け方なら、本人の気持ちを大切にしたまま安全を保てます。「危ないからやめて」より「ここは私が持つから、置き場所を教えて」のほうが受け入れてもらいやすくなります。どうしても一人でやろうとするときは、せめて足元を守る履き物と手袋だけは身につけてもらってください。
| 高齢の家族に頼む | 家族が引き受ける |
|---|---|
| 食器を包む | ガラスの片付け |
| 書類や写真の仕分け | 倒れた家具を起こす |
| 使える物の見分け | 高い所の物を下ろす |
| 置き場所の指示 | ごみ袋を運ぶ |
よくある質問

地震のあとの片付けと高齢の家族について、よく寄せられる疑問をまとめました。けがをしたときや体調が気になるときは、片付けより先に手当てと相談を優先してください。災害のあとは病院も混み合うため、小さな切り傷の手当てができるよう、救急箱の中身を平時に確かめておくと安心です。片付けの進め方は家の状態によって違うので、自分の家に合うところだけ取り入れていただければ十分です。
片付けはいつから始めればいいですか
揺れがおさまってすぐに始める必要はありません。まずは家族の無事を確かめ、ガスや電気、家の傷みに危険がないかを見てからにしましょう。夜は足元が見えにくいため、通り道を空ける最低限の片付けにとどめ、本格的な片付けは明るくなってから始めるのがおすすめです。
ガラスで足を切ってしまったらどうすればいいですか
傷口に破片が残っていないかを確かめ、きれいな水で洗い流してから、清潔なガーゼやタオルで押さえて血を止めます。血が止まらない、傷が深い、破片が取れないといった場合は、医療機関に相談してください。血をさらさらにする薬を飲んでいる方は血が止まりにくいことがあるので、早めの相談が安心です。
片付けの前に写真を撮るのはなぜですか
家や家財の被害を記録しておくと、罹災証明の申請や、保険の手続きに役立つことがあるためです。部屋全体と、壊れた物の近くからの写真を両方撮っておくと分かりやすくなります。必要な写真や手続きは自治体や保険会社によって違うため、それぞれの案内を確かめてください。
壊れた家具や家電はすぐに捨てていいですか
災害のあとのごみは、ふだんのごみ出しとは別の方法で集められることがよくあります。決められた場所や日が案内されるまで、家の外の邪魔にならない場所にまとめておきましょう。捨てる前に写真を撮っておくと、手続きのときに困りません。出し方はお住まいの市区町村の案内を確かめてください。
片付けを手伝ってくれる人はいますか
大きな災害のあとは、社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを開き、片付けの手伝いを受け付けることがあります。高齢者だけの世帯や、重い物を動かせない家庭は、遠慮せずに相談してみてください。ボランティアの受け付け方は地域や災害によって違うため、市区町村や社会福祉協議会の案内を確かめましょう。
家具の固定は片付けのあとでもできますか
はい、片付けで家具を元の位置に戻すときこそ、固定を見直すよい機会です。余震が続くうちは、背の高い家具を寝室や通り道から離して置くだけでも安全が変わります。寝室から始める家具固定の考え方は高齢者がいる家庭の家具固定 まず倒れない場所からで紹介しています。
まとめ

地震のあとの片付けでけがが起きやすいのは、散らばったガラスや物、早く元に戻したい焦り、そして疲れと余震が重なるためです。片付けの前に足元を守り、ガス・電気・家の傷みを確かめてから、通り道と寝る場所を先に片付けましょう。順番を決めて、重い物は一人で持たず、高齢の家族には座ってできる役割を任せれば、けがと転倒の多くは防げます。ごみの出し方や建物の調べ方は自治体によって違うため、お住まいの市区町村の案内もあわせて確かめてください。
- かかとのある履き物から
- ガスのにおいと家の傷みを確認
- 片付けの前に写真を撮る
- 通り道と寝る場所を先に
- 重い物は二人以上で
- 高齢の家族には座れる仕事を
今日は、家族それぞれの寝床のそばに、かかとのある室内履きを1足ずつ置いてみてください。次に、軍手とガムテープを同じ場所にまとめておくと、揺れのあとにすぐ安全な片付けを始められます。

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