真夏に大きな地震や台風で停電すると、エアコンも冷蔵庫も止まります。足が弱く、避難所まで移動するのが難しい親と家で過ごすことになったら、暑さから親をどう守ればいいのか。そんな不安を感じている方は少なくありません。高齢になると暑さやのどの渇きを感じにくくなるため、本人が「大丈夫」と言っていても体の中では負担がたまっていることがあります。エアコンが止まっても、涼しい部屋を選び、体を冷やし、水分をこまめにとる順番を決めておけば、家の中でできる暑さ対策はあります。この記事では、停電中の熱中症を防ぐ工夫と、迷ったときの判断の目安をまとめました。
- エアコンが止まる暑さ
- 親が水を飲みたがらない
- 避難所まで歩けない
- 夜も暑くて眠れない
- 熱中症の見分け方が不安

義母は暑くても「平気よ」と言って、あまり水を飲みません。夏に停電したら、家の中で熱中症になってしまわないか心配です。

その心配はもっともです。高齢の方は暑さを感じにくいので、本人の「平気」だけで判断しないことが大切なんです。家族が時間を決めて声をかけ、部屋と体を冷やす順番を決めておけば、停電中でも負担を減らせますよ。
今日ひとつだけやるなら、家の中で「いちばん涼しい部屋」がどこかを家族で話してみてください。停電したときに集まる場所が決まっているだけで、慌てずに動き出せます。
停電時の高齢者の熱中症リスク

熱中症は炎天下の屋外だけで起こるものではありません。高齢者の熱中症は、家の中で起きることが多いと言われています。停電でエアコンが止まると、閉めきった室内の温度は時間とともに上がっていきます。高齢者は暑さやのどの渇きに気づきにくいため、本人が訴える前に家族が先回りして気を配ることが欠かせません。体温を下げる汗の働きも、年齢とともに弱くなりがちです。まずは停電中の高齢者が熱中症になりやすい理由を3つ知っておきましょう。
暑さやのどの渇きを感じにくい
年齢を重ねると、暑さを感じる力やのどの渇きを感じる力が弱くなっていきます。そのため、室温が上がっていても「暑くない」と感じたり、水分が足りなくても「のどは渇いていない」と答えたりすることがあります。本人の感覚ではなく、温度計の数字と時間を決めた声かけで判断するのが安全です。トイレを気にして、わざと水分を控える方もいるので気をつけましょう。
エアコンが止まると室温が上がる
夏の日中は、日差しを受けた屋根や壁から熱が伝わり、閉めきった部屋の温度はどんどん上がります。特に2階や西日の当たる部屋は、停電から数時間で過ごしにくい暑さになることもあるでしょう。ふだんエアコンに頼っている家ほど、止まったときの差が大きく感じられます。
夜も気温が下がらない日がある
真夏は夜になっても気温が下がりきらず、寝ている間に汗をかいて水分が失われていきます。寝室の暑さで眠りが浅くなると、翌日の体力も落ちてしまうものです。停電が夜まで続きそうなときは、昼のうちに寝る場所を涼しい部屋へ移しておくと安心です。
- 閉めきった暑い部屋
- 2階や西日の当たる部屋
- 水分を控えている
- 寝苦しい夜が続く
- 持病や飲んでいる薬がある
エアコンなしで涼をとる工夫

エアコンが使えなくても、家の中で涼しく過ごす工夫はいくつもあります。大切なのは、思いついたものから試すのではなく、効果の大きいものから順番に進めることです。「涼しい部屋を選ぶ → 風を通す → 体を冷やす → 水分をとる」の順で考えると、限られた物でも暑さをしのぎやすくなります。どれも特別な道具を使わずに始められるものばかりです。停電中に試したい工夫を4つ紹介します。
家でいちばん涼しい部屋に集まる
一般的に、1階で北側にある部屋は、2階や南向き・西向きの部屋より涼しいことが多いものです。停電したら、家族で過ごす場所をその部屋にまとめましょう。足の弱い親が階段を上り下りしなくて済むよう、寝る場所も含めて1階の涼しい部屋で過ごせるように、平時から準備しておくと動きやすくなります。
首・脇・足の付け根を冷やす
首の横、脇の下、足の付け根には太い血管が通っていて、ここを冷やすと体の熱が下がりやすくなります。保冷剤や凍らせたペットボトルをタオルで包んで当てると、肌を冷やしすぎずに済むでしょう。冷蔵庫が止まっても、冷凍庫を開け閉めしなければ、しばらくは保冷剤が使えます。
風の通り道をつくる
部屋の対角線上にある窓を2か所開けると、風が通りやすくなります。日中はすだれやカーテンで日差しをさえぎり、外のほうが涼しくなる朝晩に窓を開けるのがおすすめです。防犯が気になる場合は、家族が起きている時間だけ開けるなど、無理のない範囲で行ってください。
電池式の扇風機を用意する
停電中でも、電池やモバイルバッテリーで動く小型の扇風機があれば、風を送ることができます。濡らしたタオルを首にかけて風を当てると、気化熱で体が冷えやすくなります。ポータブル電源があれば家庭用の扇風機も動かせますが、エアコンを長時間動かすのは容量の大きな機種でも難しいことが多いので、扇風機や充電に使うと考えておきましょう。
- 電池式の温湿度計
- 電池式の小型扇風機
- 保冷剤と手ぬぐい
- すだれや遮光カーテン
- モバイルバッテリー

停電中の水分補給のコツ

熱中症を防ぐうえで、水分補給は欠かせません。ただ、のどの渇きを感じにくい高齢者は、自分から水を飲もうとしないことがよくあります。トイレの回数を減らしたくて、水分を控えてしまう方も少なくないでしょう。「のどが渇いたら飲む」ではなく、「時間が来たら飲む」に切り替えることが、停電中の水分補給のいちばんのコツです。持病で水分を制限されている方は、事前に医師に確認しておく必要があります。停電中の水分補給のコツを4つ紹介します。
時間を決めて少しずつ飲む
一度にたくさん飲むより、コップ半分ほどを1時間おきに飲むほうが体に負担がかかりません。食事のとき、起きたとき、トイレのあとなど、飲むタイミングを決めておくと忘れにくくなります。家族が「お茶にしましょう」と一緒に飲むようにすると、本人も自然に口をつけやすくなります。
汗をかいたら塩分も補う
汗をたくさんかいたときは、水やお茶だけでなく塩分も失われています。経口補水液やスポーツドリンク、梅干しや塩あめを備蓄に加えておくと安心です。ただし、塩分を控えるよう言われている方もいるので、どれくらいとってよいかは、かかりつけ医に相談しておいてください。
水分制限がある人は医師に確認
心臓や腎臓の病気などで水分や塩分の量を制限されている方は、自己判断で量を増やすと体に負担がかかることがあります。暑い時期の水分のとり方について、ふだんの受診のときにかかりつけ医に聞いておきましょう。答えをメモにして、薬と一緒に保管しておくと家族も迷いません。
冷蔵庫が止まったときの飲み物
停電で冷蔵庫が止まると、冷たい飲み物は用意できなくなります。常温のままでも飲める水やお茶、経口補水液を備えておけば問題ありません。高齢者がいる家庭の水の量の目安は断水しても慌てない 高齢者がいる家庭の水の備えで詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
| 飲み物 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 水・麦茶 | ふだんの水分補給 | 少しずつこまめに |
| 経口補水液 | 汗を多くかいたとき | 塩分制限の方は医師に確認 |
| スポーツドリンク | 食欲がないとき | 糖分が多いので飲みすぎない |
熱中症のサインと動き方

どれだけ気をつけていても、暑さが続くと体調を崩すことはあります。大切なのは、早めのサインに気づいて、すぐに体を冷やすことです。熱中症は、軽いうちに手当てをすれば回復しやすいと言われています。呼びかけへの返事がおかしい、自分で水が飲めないときは、迷わず119番に電話してください。停電中でも、携帯電話がつながれば救急車は呼べます。熱中症のサインと、迷ったときの動き方を3つ紹介します。
早めのサインを見逃さない
めまいや立ちくらみ、だるさ、頭痛、吐き気、汗が異常に多い・逆に出ないといった様子は、熱中症の早めのサインです。高齢者は「なんとなく元気がない」「食欲がない」という形で表れることもあります。いつもと様子が違うと感じたら、涼しい場所で横になってもらい、体を冷やして水分をとってもらいましょう。
返事がおかしいときは119番
呼びかけに対する返事がはっきりしない、ぼんやりしている、けいれんがある、自分で水を飲めないといったときは、重い熱中症の可能性があります。このようなときは家で様子を見ず、すぐに119番に電話して、救急車を待つ間も首や脇の下を冷やし続けてください。判断に迷う場合は、地域によっては救急安心センター(#7119)で相談できることもあります。
家で過ごせないときの避難先
停電が長引き、家の中がどうしても暑くて過ごせないときは、冷房のある場所へ移ることも考えます。自治体によっては、暑さをしのげる場所として「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」を指定しているところがあります。どこが使えるか、停電時にも開いているかは、お住まいの市区町村で確認しておいてください。避難所や福祉避難所の使い方は福祉避難所とは 使い方と頼れる範囲で紹介しています。
- 呼びかけへの返事がおかしい
- 自分で水が飲めない
- けいれんがある
- 体が熱いのに汗が出ない

よくある質問

夏の停電と熱中症について、よく寄せられる疑問をまとめました。すべてを一度にそろえる必要はありません。温度計1つ、保冷剤1つからでも十分な一歩になります。持病や飲んでいる薬がある方は、暑い時期の過ごし方をかかりつけ医に相談しておくと安心です。介護サービスを使っている場合は、ケアマネジャーにも停電時の過ごし方を伝えておきましょう。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
室温は何度を目安にすればいいですか
一般的には、室温が28度を超えないようにすることがひとつの目安とされています。ただし、湿度が高いと同じ温度でも熱中症になりやすくなります。電池式の温湿度計を親が過ごす部屋に置き、数字で確かめる習慣をつけておくと判断しやすいでしょう。
親が「暑くない」と言って窓を閉めます
高齢になると暑さを感じにくくなるため、本人にとっては本当に暑くないのかもしれません。無理に説得するより、「温度計が30度になっているから、少し窓を開けようか」と数字を見せて伝えると、受け入れてもらいやすくなります。冷えすぎが気になる方には、首元だけを冷やすなど負担の少ない方法を選んでください。
ポータブル電源でエアコンは動きますか
機種によっては動かせるものもありますが、エアコンは使う電気が大きいため、長い時間動かし続けるのは難しいことが多いです。扇風機やスマートフォンの充電、電気を使う医療機器など、何に使いたいかを先に決めてから容量を選ぶと失敗しにくくなります。停電時の照明や医療機器の備えは高齢者と暮らす家の照明・暖房・医療機器の備えで紹介しています。
夜に窓を開けて寝ても大丈夫ですか
外の気温が下がる夜は、窓を開けると涼しく過ごせます。一方で、防犯や虫が気になる場合もあるでしょう。網戸を閉める、家族が起きている時間だけ開ける、2階の窓だけ開けるなど、家の状況に合わせて無理のない方法を選んでください。
停電中の情報はどうやって集めればいいですか
停電が長引くと、テレビが見られず、スマートフォンの電池も心配になります。電池式のラジオがあれば、暑さの情報や停電の復旧の見通しを聞くことができます。停電中の情報の集め方は高齢者と情報収集する在宅避難の備えで詳しくまとめています。
まとめ

夏の停電でエアコンが止まると、暑さやのどの渇きを感じにくい高齢者は、気づかないうちに熱中症の危険が高まります。それでも、涼しい部屋を選び、風を通し、体を冷やし、時間を決めて水分をとる順番を決めておけば、家の中でできる対策は少なくありません。本人の「平気」ではなく、温度計の数字と家族の声かけで判断することが、親を暑さから守る近道です。
- 1階の涼しい部屋に集まる
- 風の通り道をつくる
- 首・脇・足の付け根を冷やす
- 時間を決めて水分をとる
- 水分制限は医師に確認
- 返事がおかしければ119番
今日は、家の中でいちばん涼しい部屋がどこかを家族で確かめてみてください。次に、電池式の温湿度計と小型の扇風機を用意しておくと、停電中も数字と風で暑さに向き合えます。停電が長引いたときに扇風機や充電を続けたい場合は、ポータブル電源も選択肢のひとつになるでしょう。


コメント